不動産を取引する人には必ず付き物の「媒介契約」。このスタイル(正しくは態様といいます)のひとつで、 「専任媒介」というのがあります。
「専任媒介とは?」「契約内容は?ほかに媒介の種類は?」
「専任媒介のメリット・デメリットは?」
媒介契約とは 「その仕事で不動産業者がどう動くか・動けるか」を取り決めているのですが、専任媒介にはメリット・デメリット両方があります。
今回はこの「専任媒介」についてのお話をします。皆さんと、不動産とのかかわりが見えてくるお話です!
目次
1.専任媒介とは?
あらためて「専任媒介」とは、不動産売買・賃貸の仲介業務の際に売主・買主(あるいは貸主・借主)が結ぶ契約形態のひとつです。
「この物件をお任せしますので、決めてください!」という際の「任せ方」を決めるのがこの契約形態で、正しくは「取引態様」と言います。
「専任媒介」は 不動産会社1社のみと専任で契約する=依頼者(売主や貸主)が他の宅建業者に重複して依頼できない取引態様で、それ以外の会社と別途契約した場合は依頼主は違約金を支払うことにまでなったりします。
1-1.賃貸の媒介契約
本稿は売買中心の解説となっていますが賃貸の場合も売買同様、後述のような3つの媒介契約形態を選択するのは同じです。
賃貸の媒介の場合、この約束ごとは実は書面で作るように強制されておらず、内容は言葉=口約束だけでも容認されています。媒介契約の種類についても実は都道府県単位(監督官庁)で考え方が違っていて統一されていないなど、実態はユルユルです。
それでも特に問題が生じるケースはあまりないのが実情ですが、賃貸住宅をめぐる情勢からすると、今後改められていくかも知れません。
ちなみに賃貸貸主の場合の「管理契約」と「媒介契約」は別もので、借りるお客様を募集する媒介契約に対して、管理契約というのは入居するお客様が決まって以降もそのお世話をする業務の契約です。
2.専任媒介の特徴 媒介契約の種類
媒介契約には、専属専任媒介契約・専任媒介契約・一般媒介契約の3つが存在し、それぞれ特徴が異なります。
媒介契約名 | 専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 |
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何社と契約できる? | 不動産会社1社のみと契約それ以外の会社と契約した場合は違約金が発生する | 不動産会社1社のみと契約それ以外の会社と契約した場合は違約金が発生する | 複数の不動産会社と契約できる ※ |
自ら買い手を見つけていい? | 売主が買い手を見つけて契約する場合は、違約金が発生する | 売主が買い手を見つけて契約する場合は、媒介契約の履行のために要した費用を支払う | 売主が買主を見つけて契約できる |
【不動産会社の義務】 販売状況の報告頻度は? | 1週間に1回以上、売主へ販売状況を報告 | 2週間に1回以上、売主へ販売状況を報告 | 報告義務なし |
【不動産会社の義務】 レインズへの登録は? | 媒介契約締結の後、5日以内にレインズへ登録 | 媒介契約締結の後、7日以内にレインズへ登録 | 登録義務なし。売主の希望による |
※一般媒介契約は、依頼先を公表する「明示型」と、公表しない「非明示型」があり、売主は「明示型」の場合で公表していない会社と契約し、その報告を怠ると営業経費等の支払いが必要となる。
販売状況の報告は、売主と業者のコミュニケーションとして、本来義務の有無に関係なく、定期的に行うのが望ましく、業者によっては一般媒介でも定期的に売主に報告書を提出しているところもあります。
レインズ=REINSとは、不動産業者間の情報流通機構で、ここに掲載すると正式に不動産業者間マーケットに物件情報が公開されたことになるものです。
また、このほか 「代理」の契約形態も存在します。主に不動産売買の際に使われる取引様態で、代理権をもつ不動産業者が売主の代理人となって、買主と契約します。
売主に代わって売買行為を行い、仲介ではないため買主に仲介手数料は発生しません。
2-1.仲介と媒介
ちなみに「不動産の貸主と借主、または売主と買主の間にたつこと」を意味する言葉「仲介」と「媒介」は、どちらも同じような意味で使われています。
そこを細かく分類すると、「仲介」は商業用語として広く一般的に使われているのに対し、「媒介」は宅建業法(宅地建物取引業法)で使われる法律用語という違いがあり、不動産の場合「媒介」の方が、どちらかと言えば「正しい」使い方となります。
3.専任媒介をおすすめする場合 契約形態の使い分け
通常不動産業者に依頼する上でオススメなのは、一般媒介に比べて専任媒介です。
1社としか媒介契約を締結できないので、他社に横取りさせる心配がなく、かつ「うちが動かなければ」ともなるため、業者は積極的に営業活動をしてくれます。
逆に、一般媒介の物件は「よそでも同じ立場で動いてる」と思うと、どうしても積極的に働きづらくなるのが人間の心理です。
一方同じ専任でも専属専任媒介は前出の表のように「他と決める」と違約金が発生するなど売主の動きが制限されるため、リスキーな側面があります。(なので契約期間は3ヶ月と短くはなっています)
この「ほどよい距離感」が専任媒介のメリットなのですが、同時に、良くない、あるいは相性の良くない業者と組んでしまった場合「乗り換える」手間と勇気を要するのが、デメリットというべきなのでしょう。
逆に一般媒介が良いケースもあります。例えばあなたの物件が「駅近・築浅・日当り良」などの条件の揃った優良物件の場合は、どこの業者も進んで動いてくれるので、情報の拡散性の強い一般媒介推しです。
メリット |
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デメリット |
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取引をおこなう不動産が遠方の場合、契約の時間を作ることが難しい場合、共有持分の不動産の売却の場合などは代理の態様で契約を行うケースもあります。
4.専任媒介を経験した人の声
ここで、専任媒介にまつわるお客様の声を拾ってみました。専任媒介を結んだからと言って、油断は禁物です!
4-1.干し行為
「専属専任で、しばらく何もしないで、あとで値下げを言われた。最初から適正価格を説得してほしかった・・・。」
最初のうちは言い値で出して、無反応な期間を経て値ごろ感への自覚を促す、これも業者の手法ではありますが、明らかに周辺とそぐわない値付けで公開して、恥をかくのは売り主です。
4-2.「両手」狙いの囲い込み
「他の業者の紹介のお客は断り、買主も無理やり自社で探して決めようとしたのが分かった。」
これは囲い込みと言われる悪質行為で、ご法度です。売り買い両方のお客を決めて双方から仲介手数料をもらうことを「両手」と言いますが、この両手を狙って、お客を断るなど、あってはならないことです。
4-3.力量差?物件放置?
「違うところにお願いしたとたんに、すぐにお客がついた。」
この辺りは売主も定期的に業者の検討をするのも良いと思います。今の業者よりホームページの情報が新しく、常に更新されているところに物件を預けると、大がい今までより好結果となります。
4-4.契約は見直しを
「契約を何とな―く自動延長していたら、いつまでもアクションがなかった。」
これも上記同様、あまりに長期にわたって「無風状態」が続く時は、他の業者を検討しましょう。
たとえば状況報告ですが、一般媒介契約ですら、媒介の締結時に「媒介契約書の特約欄」に「定期報告」を行うと記入するか、売主が電話をして状況を尋ねるなどで状況確認はできます。
任せっぱなしにしておくと、どうしても「動きやすい物件」「新しい物件」「オーナーがうるさい物件」に優先順位で負けてしまうのです。
5.専任媒介についてのまとめ
以上、「専任媒介」というテーマでのお話をしました。具体的な体験なしでは実感の湧きづらいお話であるのは承知しつつ、専任媒介のおおざっぱな決まり、他との違いは理解をいただけたでしょうか?
媒介を依頼する側が、不動産業者をやる気にさせる手法は、契約の態様以外にいくらでもあります。
定期的に報告を受け、いたずらに値下げをせずに 「どうすれば決まりやすいか」条件の見直しの検討や、宣伝内容のアップデート、ライバルの研究など話し合ったり、外構の除草や剪定で見映えアップし、それを伝えたりなど。
うまく行っている人は、様々に考え、動いています。「専任媒介で任せっぱなし」ではダメなのです。
- 専任媒介は不動産の仲介依頼の3つの態様のひとつ。1社とのみ契約。
- 専任媒介は熱心な業務を促す反面、やる気がない業者の場合不利に。
- 専任業者が他社からの客付け申し出を異なる「囲い込み」に注意。
- 業者とは充分な連絡を取り、物件の現状と改善を話し合おう。