家を作ろうとしている人には非常に気になる「ua値」。快適な家の大事な指針でありながら、その実態はまだあまり知られていないようです。どう利用したらよいのでしょうか?
「ua値の意味はどんなこと?」
「ua値の計算方法は?」
「改善するには?」
「どのくらい違う?あてにならない?」
難しい話は専門家に任せておけば良いでしょうが、 どうやったら家は住みよくなるのか、それを知るのは大事なことですよね?
今回は「ua値」についてのお話をします。ua値を理解して、家の性能評価に明るくなりましょう!
目次
1. UA値とは?基準の決まり方・知るメリット
ある日、物件の屋根裏に大工さんと入っていた時のことです。その場所は真夏の日差しに熱せられて地獄の暑さだったのですが、大工さんがひと言ポツリ、「ああこれ、断熱材足せば全然違うよ・・・。」
見えない部分で大きな差が出るのが、断熱性能です。
1-1. ua値とは何?
ua値とは、住宅の断熱性能をはかる基準です。「家の中の温度を、どれだけ逃がさずにキープするか」の問題です。夏ならば冷房、冬ならば暖房の効きが大きく左右される、その指標です。
冷暖房の効きが良ければ、当然光熱費も安くあがることになりますね。
ua値の単位は W/m2K(ワット パー 平方メートル ケルビン)といい、数字が低いほど優秀です。国推奨のZEH仕様はこの数値は0.6が規準となっていますが、技術の高い施工をするハウスメーカーは0.2~0.4が規準となってきている状況です。
ua値 | 性能 | 年間光熱費 |
---|---|---|
0.23以下 | 暖房オフで室温15℃以上キープ | |
0.34以下 | 暖房オフで室温13℃以上キープ | 267,137円 ua値:0.32 |
0.40以下 | 次世代基準より25%省エネ | 270,654円 ua値:0.38 |
0.46以下 | 暖房オフで室温10℃以上キープ | 277,808円 ua値:0.45 |
0.60以下 | 次世代省エネより20%省エネ | 293,110円 ua値:0.58 |
0.87以下 | 次世代省エネより10%省エネ | |
0.87以下 | 暖房オフで室温8℃以上キープ | 311,189円 ua値:0.71 |
求められるua値は地方(気候)によってことなり、当然北海道など寒冷地などの方がシビアです。
地域区分 | ZEH基準ua値 |
---|---|
北海道 | 0.4 |
東北・北関東山間部 | 0.5 |
東日本沿岸部・西日本山間部 | 0.6 |
西日本沿岸部 | 0.6 |
九州四国南岸 | 0.6 |
1-2.ua値の計算
ちょっと難しい話となりますが、ua値は屋根天井・壁・窓・床と、それぞれの 熱損失量を熱貫流率を使って計算します。そして、建物全体の熱損失量の合計を建物全体の 外皮合計面積で割り、 外皮平均熱貫流率(ua値)を求めます。
ua値=各部位の熱損失量の合計/外皮合計面積
出てきたこの数値は家全体の平均値=総合数値となりますから、窓など熱が逃げやすい場所と、壁など断熱しやすい箇所とで性能は異なります。
1-3.メリット:快適性
ua値を高められれば、壁際・窓際のヒンヤリ・冷たいスキマ風・頭と足もとの温度差などが減り、快適になります。夏は逆に、冷房がゆるく部屋全体に行き渡り、やはり高低による温度差も少ない状態となります。
「古い家は寒い」とよく言いますが、断熱性能に関する研究の進んだ成果と言って良いでしょう。
いままで使用されてきた床暖房や多くのエアコンを使用しなくとも、エアコン2台だけで家中が冬は暖かく、夏は涼しくなるというようなことが可能になってきます。
1-4.メリット:光熱費が変わる
断熱性能が高いと外気の影響が小さいため、冷暖房に必要な電力も小さくなります。温め機能なしで飲み物を保温するタンブラーと同じ理屈です。
注意すべきは普通の断熱性能の家と次世代省エネ基準の家では、当然建築費が変わってきて、その差額は150万円~200万円。断熱性能を上げれば、ランニングコストが下がるかわりにイニシャルコストが上がります。ランニングコストで月平均5千円光熱費が違えば、以下の回収想定です。
5,000円×12か月×35年=2,100,000円
コストで元を取るには35年を要するとしても、快適なうえに、さらに以下に続くメリットがプラスされるとしたら、どうでしょう?
また、ZEH仕様の住宅は固定資産税等の優遇が適用されるため、そのあたりのメリットも勘案できます。
1-5.メリット:防音効果も高まる
断熱材には防音材の役割もあるので、分厚いほど防音効果も高くなります。
気密性が高い住宅ほど、部屋の音漏れや外の騒音も防ぐことができるのですが、これは戸建住宅でも 「家庭内の騒音ストレス軽減」に寄与し、子どもが暴れても、少し音量を上げて音楽を楽しんでも、他の部屋で平気、という効果を生み出します。
1-6.メリット:温度差を減らして長寿命
家の中で各部屋・室温の変化が少なく、ヒートショックなどのリスクも軽減されます。高齢の方の身体の負担も減り、突然死などを未然に防ぎやすくなります。
室温が安定していると、ストレスも軽減され、睡眠の質も上がるという研究結果もあります。
2.UA値を下げる技術
2-1.どんな家が断熱に強い?
開口部以外の壁面や屋根・床などでua値を下げるには、何と言っても 断熱材の素材と入れ方(厚さ)が差を生みます。たとえば壁厚がとれれば、それだけ断熱材を沢山入れられ有利となるため2×4よりも2×6の方が一般的に断熱性能に優れているとされます。
また、「すき間を作らない」=気密性も断熱性能にはたらく重要な要素で、この 気密性は建材の加工や工作の精度に影響を受けます。
開口部=窓は、性能を上げるために材質の性能(2重・充填・厚さ)と、「 なるべく小さいこと」が求められます。
つまり各メーカーは時にはオリジナルで開発した断熱材や窓の性能、加工精度による気密性などで断熱性能の特色をアピールするのです。
2-2.ua値はあてにならない?
各メーカーのうたっているua値は、商品設計段階での達成値・モデルプランでの数値であり、実際の現場での施工技術・建物の環境、施主の希望に沿った間取りなどで数値は左右されます。
したがって、あくまで目安という側面もあるのですが、中には施工後の実測を行ってくれる業者もあります。
3.ハウスメーカーのUA値ランキング
意外にローコストの価格帯となるメーカーも、断熱に力を注いで上位に喰いこんでいるところがあるのが分かります。
順位 | 業者名 | 構造・工法 | ua値 | q値 |
---|---|---|---|---|
1 | 大共ホーム | 枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.15 | 0.6? |
2 | FPの家 | 木造軸組 | 0.16 | 0.44 |
3 | 北洲ハウジング | 枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.23 | 0.94 |
4 | 土屋ホーム | 木造軸組、枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.24 | 1.0? |
4 | 日本ハウスHD (旧:東日本ハウス) | 木造軸組 | 0.24 | 0.94 |
5 | アイフルホーム | 木造軸組 | 0.25 | 1.0? |
5 | 一条工務店 | 木造軸組、枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.25 | 0.51 |
6 | フィアスホーム | 木造軸組 | 0.27 | 0.88 |
6 | ヤマト住建 | 木造軸組 | 0.27 | 1.0? |
7 | クレバリーホーム | 木造軸組 | 0.28 | 1.15? |
7 | フローレンスガーデン(工藤建設) | 枠組壁工法(2×6) | 0.28? | 1.15 |
8 | インデュアホーム | 枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.3 | 1.0? |
8 | ヤマダホームズ | 木造軸組、枠組壁工法(2×4、2×6)、木質パネル | 0.3? | 1.28 |
9 | 住友林業 | 木造軸組 | 0.33 | 1.4? |
10 | イシカワ | 木造軸組 | 0.34? | 1.3? |
10 | トヨタウッドユーホーム | 枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.34 | 1.3? |
10 | 桧家住宅 | 木造軸組 | 0.34 | 1.3? |
10 | ブルースホーム | 枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.34〜0.46? | 1.3〜1.6 |
11 | アエラホーム | 木造軸組 | 0.35 | 1.4? |
12 | セキスイハイム | 鉄骨系プレハブ、枠組壁工法(2×6) | 0.36 | 0.99 |
13 | セルコホーム | 枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.37 | 1.33 |
14 | ウィザースホーム | 枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.39 | 1.4? |
15 | イシンホーム住宅研究会 | 木造軸組 | 0.4? | 1.32 |
15 | カネカソーラーサーキットのお家 | 木造軸組 | 0.4 | 1.4? |
15 | サイエンスホーム | 木造軸組 | 0.4? | 1.4? |
15 | ジブンハウス | 木造軸組 | 0.4 | 1.4? |
15 | Skog(スコーグ)のいえ | 木造軸組、枠組壁工法(2×4、2×6) | 0.4? | 1.4? |
15 | 積水ハウス | 木造軸組、鉄骨系プレハブ、重量鉄骨 | 0.4? | 1.4? |
15 | ダイワハウス | 木造軸組、鉄骨系プレハブ、重量鉄骨 | 0.4 | 1.4? |
15 | タマホーム | 木造軸組 | 0.4? | 1.4? |
15 | ミサワホーム | 木造軸組、鉄骨系プレハブ、木質パネル、重量鉄骨、RC | 0.4? | 0.8 |
15 | ユニバーサルホーム | 木造軸組 | 0.4? | 1.4? |
15 | 夢ハウス | 木造軸組 | 0.4? | 1.4? |
15 | ロイヤルハウス | 木造軸組 | 0.4? | 1.4? |
※q値についてはこの後ご説明します。
※?=古い値、メーカ発表以外の参考値。
4.UA値とQ値の違い。換気の影響はある?
前項の表に登場した q値。これも同じ断熱性能をあらわす値で、単位も同じW/m2K(ワット パー 平方メートル ケルビン)です。
2013年までは主にこのq値を用いて住宅の断熱性能を判断していましたが、現在は省エネルギー基準の改正で、ua値で断熱基準が判断されるようになりました。
4-1. ua値とq値の違い
外皮平均熱貫流率(ua値)と熱損失係数(q値)は次の2点が違います。
2.q値では換気による熱損失量が含まれているがua値は含まれてない。
そしてq値の計算方法は以下です。
(各部の熱損失量の合計 + 換気による熱損失量の合計)/ 延べ床面積
ua値とq値は計算で換算可能で、下記のようなWebサイトもあります。
Q値⇔UA値換算ツール
4-2.C値
このほか、気密性をあらわす C値という基準値があり、これは1平方メートルあたりに存在するすき間の面積を示す数値指標です。すき間が少なければ高気密・高断熱と判断できます。
C値の計算方法は以下です。
住宅全体すき間の合計面積(単位㎠)/延べ床面積(単位㎡)
4-3.換気と断熱
換気の種類にはおもに第1種と第3種があり、吸気は自然に行う第1種に対し、吸排気ともに機械で行う 第3種は、コストはかかりますが断熱上も有利となります。
いま、コロナ禍の中で室温のロスなく換気のできる第3種換気は注目されています。
5. ua値についてのまとめ
以上、「ua値」というテーマでのお話をしました。言葉の持つ意味合い、断熱性能が良いことのメリットなどは、理解をいただけたでしょうか?
住まいの満足度について、快適性、健康を守るなどの要素は重要な反面数値化がしづらい分野でした。
この10年くらいで、省エネルギーという国の肝いり要素も含めて、業界全体でかなりの進歩を遂げてきたことは間違いがなく、 今後も注目されていく分野でしょう。
既存の住宅についても、断熱リフォームへの志向が高まってきており、しかもこれらの費用については 自治体等の補助金が適用されるケースも増えてきています。
これは一度調べてみる価値ありですね!
- ua値とは、住宅の断熱性能をはかる基準。数値が低いほど優秀。
- ua値がすぐれていると、快適性・経済性・健康のほか防音などにもメリットが得られる。
- ハウスメーカーは断熱材・窓材の工夫や加工精度=気密アップでua値改善を目標にしのぎを削っている。
- ua値の他、q値やc値など、断熱気密の指標がある。
- 第3種換気でも断熱性能改善が図ることができる。