戸建住宅の外構でよく見る「犬走」をご存知でしょうか。名前までわかる人は少ないかも知れませんね。
「住宅の犬走とは?なんのためのもの?」
「施工価格は高い?」
「メリットは?必要ない?」
「実際に作った人の感想は?」
意外にいろいろな役割を持った犬走。自宅にある人も、あまり意識していないことが多いようですが、実はけっこういろんな役割があります。
今回は「犬走」についてのお話をします。住まいを大切にする知恵を学んでみましょう!
目次
1.犬走(いぬばしり)とは?
犬走とは、家の外周に作る、砂利やコンクリートほかを布いた通路状のものです。
出典:リノコ
古くからの日本の建築技法で、もともとは雨どいの代わりの 雨滴飛散防止・排水機能がメインだったものが、後述のように様々な役割を担うようになりました。
一般的な犬走の幅は、壁面から大体40~60cm程で、コンクリートで固めたタタキ状のものも見られます。
2.犬走(いぬばしり)の種類と価格
犬走りの費用は、新築施工時などは外構工事として駐車スペース・フェンス・植栽など他の工事もセットになって300万円!ということもありますが、砂利敷き、コンクリート舗装を行うだけなら20万~40万で可能です。
仮枠、生コン(1.5立米)打ち | 80,000円(税込) |
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地面の鋤とり、残土処分、栗石敷き、ランマー突き固め、メッシュ、生コン打設、左官モルタル仕上げ | 210,000円(税込) |
高さ15cm奥行き60cm、幅約300cmのコンクリート敷 | 130,000円(税込) |
敷く素材が砂利で2,500円~/㎡、コンクリートで5,000~6,000円/mというデータもあります。
犬走りってなんなの?ウチにはいる?
【DIY】素人でも犬走(いぬばしり)は作れる!手練り土間コンで便乗施工!
3. 犬走(いぬばしり)を作るメリット【必要ない?】
日本の気候風土に合わせて活用されてきた犬走は、意外に多用途でメリットも多数あります。
3-1.雨滴の跳ね返りよけ 防水乾燥
雨どいが付いていても、軒の角やカーポートの一部など、雨滴の降下がカバーできないような箇所は結構あります。雨が家の外壁にはねて、犬走がない状態だと、泥はねとなって外壁を汚し、傷めます。これを清掃するのは結構大変です。
エアコンの配線・配管や、その他屋外の電気配線、テレビアンテナ配線も、雨が跳ねかかり続けると悪影響があるため、これらの保安にもなっている場合があります。
また、雨がかかるのを防ぐのは、湿気から家を守ることにもなります。
3-2.虫の侵入路を断つ
シロアリをはじめとする虫の侵入路は土中からなので、犬走で土の部分を外壁や基礎から遮ることで、木造の構造を湿気とともに食い荒らす害虫の侵入を防ぐ役割も果たします。
3-3.玉砂利敷きで防犯
砂利敷きにすると歩く際に音がするので、防犯効果があります。この歩く音が大きく出るようにんっている「防犯砂利」というのが、よくホームセンターなどで売られています。
3-4.植栽スペースとして
犬走の機能を持ちながら、植栽スペースを兼ねた例をよく見かけるようになりました。限られた面積を活かしながら、植物の癒しを家族や近隣に取り入れるアイデアです。
3-5.雑草防止
完成した家の周りを、土のままにしておくとそこには100%かならず、雑草が生えてきます。雑草は季節に応じて生え変わりながら、どんどん勢いを増し、放置しておくと大変な手間になり、見た目は大変「みっともなく」なります。
これは経験しなければ分かりづらいことですが、こまめに除草作業を行っても大変なのには変わりがなく、犬走を設けることで、その手間が大幅に軽減されます。
3-6.高級感
特に和風建築の家に多いですが、きれいな犬走を設けることで、家の高級感の演出になっている例があります。凝った庭造りにくらべれば、この手法はかなりコスパがいいと言えるでしょう。
3-7.犬走は必要ない?
現代の住宅事情に合わせて、犬走のとらえ方も変化があります。
排水機能について、施工に問題があるとかえって敷地の水はけが悪くなる例があったり、雨どいだけで排水が間に合ってしまうようなケースだと必要性が少ない場合があります。
また、雨どいを超えるような大雨を想定しても、基礎高さが45cm以上・2階建てでも60cm以上の軒がある場合、泥跳ね・水撥ね回避のためだけなら犬走りを作る必要がないというデータもあります。
もし軒が短い場合は、屋根先から+30cmの犬走りを付ければだいたいカバーできるでしょう。
敷地面積の制限が大きい都心の狭小地などでは、作りたくとも難しいケースもあり、除草も防草シートなどで簡易的に済ますケースも見られますね。
4.犬走(いぬばしり)を実際に作った感想
実際に施工した人の感想です。
意外に家庭的な理由ですね。
「洗った靴や、車のマットなど、洗っても家の中には干したくないものを干すのにもいいですよ。」
これは作り方次第なので一概には言えませんが。
「うちは、べた基礎の一部として犬走りが存在しています。まずベタ部分のコンクリを打ってから、立ち上がりの部分を打ちました。ベタ部分を打つときに、犬走り部分までコンクリを打ってしまうわけです。犬走りまであることによって基礎の安定性は増すとは思います。」
地中の構造的な問題。後付けでDIYなどで作る際には要注意です。
「犬走りつけると埋設管の管理が難しくなる。でも、濡れた靴を干したり、かんぴょう干したり便利なのだ。」
細かいことではありますが。
「特に困ったのが当時飼ってたワンを外から家に入れるとき。足を洗うための水道を庭につけたのに、散歩から帰ってきて家に上がるときに、せっかく洗っても、庭の泥で足が汚れちゃってたんです。超大型犬だったので、毎回大変。『ここがコンクリートだったら良かったのに。』って、思いました。」
5.犬走についてのまとめ
以上、「犬走」というテーマでのお話をしました。犬走がどんなものか、そのメリットは理解頂けたでしょうか?
スペース上の制約がある場合は致し方ないのでしょうが、家を湿気や虫から守って良好な状態で長持ちさせるためにも、意味のある造作と言えますね。
家の湿度管理は、家の維持コストの問題だけでなくカビを防ぐ=家族の健康上の問題につながります。
それから家を維持していく手間に関して言えば、除草の問題は非常に大きいです。市販の除草剤は身体への影響が強くて、子供を遊ばせる気にはなれませんし、防草シートの効力は数年間と限定的、せっせと手作業を行えば、1年の約半分は、かなりの重労働を強いられます。
犬走りを作っておけば、草取りの手間は永年にわたり、相当軽減されます。
せっかくの新築戸建が、家は立派でもまわりが草ボーボーだと、近所の人から「軽く見られ」ます。とくに郊外や地方の人は要注意!です。
「外構はあとでおいおい」という人も、さしあたって防草シートを敷き、砂利をかけておくくらいはするのをおすすめします。
- 犬走は家の外壁の外周地面を囲む砂利やコンクリートの造作。
- 元は雨どいの代わりが、家の外壁の汚れ防止、防湿にくわえて、シロアリ等の遮断などの役割を持つようになってきた。
- 家の高級感を演出したり、植栽を植えて、小さな庭のように見せるなども行われるようになった。
- 除草の手間減らしの効果は大きい。