真四角平らな陸屋根には必ずある「 パラペット」。普段は意識しない「屋根の一部」ですが、放置していると家が長持ちしないんです!
「パラペットとは?何のためのもの?」
「メリット・デメリットは?」
「扱いの注意点は?」
「メンテナンスの方法は?」
屋根は雨水や風を受け続ける部分で、ゴミも溜まりやすく、過酷な環境にさらされているのです。それを受け止め食い止めているのがパラペットです。
今回は「パラペット」についてのお話をします。家家を大事に長持ちさせたい方、ぜひ参考にしてください。
目次
1.パラペットとは?
パラペットとは、 低く立ち上げた壁(手すり壁)のことをさします。平らな屋上やバルコニー等の外周部に設置されることが多いです。
高さは場所によって10~150センチと幅があり、用途によって変えられます。最近ではとくに、陸屋根式の住宅や注文住宅、デザイナーズハウス等で用いられるようになりました。
パラペットは「胸の高さ」という意味があるので、城壁や要塞などの防御用に作られた低い壁や、低めの川の堤防なども「胸壁」あるいは「パラペット」といわれます。また、橋の構造で、橋台(橋の両端の柱)が橋の本体を囲む上端の立ち上がり部分もパラペットです。
2.パラペットを作る意味とは?【役割・分類】
1-1. パラペットの役割・メリット
役割についてのメインは、建物の先端保護と事故防止なのですが、転落防止・外壁劣化防止・防水層の形成・デザイン性なども挙げられます。
転落防止 | パラペットとは、建物の平らな屋上やバルコニーなどの外周部に設置された手すりのような場所のことを指すため、「胸壁」や「扶壁」「手すり壁」などとも呼ばれる。 もともと胸の高さまである防壁を指す言葉で、それが転じて人の落下を防止する手すりとなった。 建物の屋根やバルコニーなどにパラペットを設けることにより、人や物が転落するのを防止できる。 |
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排水して外壁劣化防止 | 屋根に傾斜がある場合、雨が降っても雨水は自然に地面に流れるが、戸建て住宅やアパート、学校などで用いられているフラットな陸屋根の場合、そのままでは雨水は外壁を伝って流れ落ち、建物が傷む。 雨水は酸性で、雨水に晒されることで外壁は劣化が進むので、パラペットを設け、雨水は雨樋などを伝って排水させ、建物の劣化を防止する。 |
防水層の形成 | 近年戸建て住宅の中にもフラットな陸屋根を設けたキューブ型住宅が増えており、傾斜のある屋根を設けた住宅よりも雨漏り対策が必要。 陸屋根の表面は防水層によって雨漏りを防ぐが、パラペットを設置することにより、壁と屋根の接合部の防水性をより向上させる。屋上に防水層を形成するためには、パラペットの立ち上がりが必要。 |
外観のデザイン性 | 建物の外観のデザイン性を高めるのに役立つ。 キューブ型住宅は、傾斜のある屋根を設けた住宅よりもシャープな印象になるので、一般的な傾斜屋根にそのイメージを作ることができる。 店舗などの場合は外壁に看板などを取り付ける際にやりやすく、パラペットがあることで屋上部分も見えなくなることから、生活感のないすっきりとした意匠になる。 |
1-2.パラペットのデメリット
反面、パラペットを設けることで、以下のようなデメリット=注意が必要な点もあります。
笠木からの雨漏り | 笠木はパラペットの頂点部分に被さっている仕上材や金属などでできた研ぎ出し石、セメントなどのこと。パラペットを立ち上げる場合、一般的にはこの笠木を使用して壁の防水壁と防水層の接点の防水性を高める。 笠木には雨漏りを防止する役目があるが、その一方で笠木を取り付けているビス穴や中の防水シートの幅が足りないなどの理由から、笠木部分から雨漏りが発生しやすくなってしまう。 |
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箱樋は掃除やチェックが必要 | パラペットにある立ち上がり部分と屋根スラブの接合部分は「箱樋」と呼ばれる。箱樋部分には屋上の雨水が集まり、落ち葉などのゴミも集める部分なので、劣化しやすい。 また、内樋が金属製の場合、落ち葉などが溜まるとサビが発生してしまう可能性があり、中に落ち葉が詰まって雨水が溢れると雨漏りの原因にもなる。 |
コストがかかる | パラペットに使用する部材と、屋根に使用する部材は異なり、雨漏りなどが発生した場合にはどちらが原因なのかを突き止める必要がある。 また、パラペットを修理する場合は一般の屋根工事業者では対応できないこともあるため、パラペットが雨漏りの原因だった場合には、発注した工事を板金工事会社へ依頼しなければならないなど、余計にコストがかかることが。 |
1-3.パラペット設置屋根の分類
屋根の形状に合わせ、パラペットは以下のように活用されています。
陸屋根 | 勾配(こうばい)のない平らな屋根。パラペットが無いとそのまま外壁に流下するため、外周すべてに設置されることが多い。陸屋根のパラペットの内側には、雨水の排水溝が設けられる。 |
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出典:神清
片流れ屋根 | 片流れ屋根は、屋根の下端の軒に雨樋があるため、3方向にパラペットを設けることが多い。パラペットの内側の雨は、屋根の面に沿って雨樋へと流れる構造。 |
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出典:雅工房
切妻屋根 | 一般的な住宅の屋根である切妻屋根にもパラペットを設置できる。3方向に設置され、コの字型になることが多い。看板建築的な用途もある。 |
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出典:街の屋根屋さん
小庇 | パラペットやパラペットのベランダが下層階の庇を兼ねている例がある。1階の開口部を直射日光や雨から守る役割を兼ねる。 |
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出典:平田組
3. パラペットのメンテナンス方法【家を長持ちさせる】
パラペットはそれ自体が家屋の補修の役割を果たしている反面、メンテナンスを怠ると、そこから家が傷んでいく要因にもなる箇所です。家にパラペットお持ちの方は、よくご覧ください!
排水溝 | 排水溝のメンテナンスは、基本的に陸屋根の防水工事とほぼ同じ。表面に塗られているトップコートは5~7年ごとに塗り替えるのがおすすめ。防水工事は以下のような処理を行う。 1.シーリング処理 2.下地の補修 |
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笠木 | 最上部に被さる笠木は直に紫外線や雨を受ける場所のため、最も傷みやすい部分とされている。以下のような定期的なメンテナンスが必要。 ・塗装 笠木だけでよい場合もあれば、笠木・胸壁・外壁・下地などを丸ごと修理しなくてはいけない可能性も考えられる。そ個まで放置すると、コストや手間、時間がかかるので定期的にメンテナンスを行うのがよい。 |
胸壁 | 笠木の下の壁は胸壁と呼ばれ、笠木の不具合の影響を受けたり、壁自体が劣化したりする可能性がある。そのため防水性を保つには、定期的な塗装が必要。ひび割れなどが発生した場合は、埋めたり張り替えるなど、補修の必要がある。 窯業系サイディング等では、目地のシーリングの打ち替えなども必要となる。 |
箱樋 | パラペットの内側にある箱樋は見えづらいため、トラブルが多いとされる場所。この部分に飛んできた落ち葉などのゴミが溜まることが多く、詰まってしまうことが多い。 また落ち葉が腐食しそれに雨水が混ざるとアルカリ性になり、それが雨樋を腐食させる可能性があるため、定期的に塗装を行い、腐食が進んでいる場合は、早めに交換する。 雨樋などの素材はトタンなどが使われることが多いが、近年では耐久性や素性を考えてガルバリウム鋼板などが使われる。 |
※メンテナンス作業の理解に、以下の用語解説も参考にしてください。
スタンション | パラペットに取り付ける仮設の危険防止柵。パラペットのメンテナンスや、屋上での防水作業の際に用いる。 |
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立上り | 屋根の高さからパラペットの上端まで延びるパラペットの本体部分(の高さ)。 |
パラペットの寸法 | 幅は様々。防水としての役割を果たすため、一般的には屋根天端から600mm以上の立上りが必要とされている。 |
パラペットクランプ | パラペットを上から挟み込んで固定し、外壁作業用のロープ等を吊るために使用するクランプ。基準に合ったものを使わないと落下の危険がある。 |
※【屋上・陸屋根】 パラペットから雨漏り?【街の屋根やさん】
4.「パラペット」についてのまとめ
以上、「パラペット」というテーマでのお話をしました。パラペットの役割と、メンテナンスの重要性などは、理解を頂けたでしょうか。
パラペットのメンテナンス以外に、屋上やベランダの防水は今後の心配要素ですね。
不景気な昨今、誰しも「効果の良く分からないもの」「出費の実感の湧かないもの」にお金を準備したりすることが、どんどんおっくうになっています。
たとえ、「深刻な状態になってから治すより、早く手入れし続けた方が、ずっと安くあがり続けますよ」と言われても、なかなか実感がわきません。
お金に余裕のある人は準備が良くて、あるいはあまり深く考えずに早い段階でパッと修理を行い、結果としてお金を節約している、ということは考えられるでしょう。
専門業者は分かっているのでしょうが、「今お金ないもん」という人に、一見不要不急の住宅メンテを勧めるのも難しいな、となるでしょう。
マンションですと、修繕積立によって定期的に修理がなされるのですが、戸建の個人宅はリフォーム業者の飛び込み営業くらしかきません。なんとか信頼できる相談相手を見つけ、修繕計画を立ててお金を積み立てられればいいのですが。
修理代を賄うために、加入している火災保険などの住宅保険が使えないか、自治体のリフォーム助成金を絡められないかなど、知恵を働かせることも必要になります。
- 「パラペット」は屋根の機能を強化補助して防水排水などに機能するほか、危険防止やデザインなど用途は多彩。
- おもに建物の屋根に関しての用語だが、低めの壁・低めの防波堤・橋の構造などもパラペットと呼ぶ場合があるので注意。
- 水平な陸屋根には必須である他、切妻・片流れ屋根にも用いられる。
- 家を守る反面、最も過酷な箇所にあるため、清掃や補修などのメンテナンスを定期的に行わないと、家にダメージを与えやすい。
- 補修等は専門業者の意見を参考にし、修理費の原資として住宅保険のカバー範囲もチェックするとよい。