不動産を所有している人には毎年5月に「固定資産税」の支払い通知が来ますね。この固定資産税、どうやって決められるかご存知でしょうか?
「固定資産税の額を知りたい」「評価額や実勢価格の意味は?」「相続税との関係は?」「安くする方法はある?」
固定資産税は、「固定資産税評価額」が元になっています。
今回はこの「固定資産税評価額」についてのお話をします。皆さん個人の不動産と、行政とのかかわりが分かります!
目次
1.固定資産税評価額とは?
固定資産税評価額とは、土地や建物を所有していることについてかかる税金・固定資産税を決定するための基準となる評価額のことで、市区町村の固定資産課税台帳に登録されています。
簡単に言うと 「その不動産にどのくらいの価値があるかおおやけの基準(評価)を決めて、それを元に支払ってもらう税金を決めましょう」ということです。
固定資産税というのは、市町村が毎年1月1日(これを賦課期日といいます)現在の、土地、家屋等(固定資産)の所有者に対し、その固定資産税評価額をもとに課税する税金です。
誰彼問わず、固定資産そのものに課税する税金なので、所有者の所得など経済力が考慮されません。したがって相続時や新規取得時などは、 「毎年一体いくらづつくらい払うのか」事前の注意が必要です。
市街化区域内の評価額はバブル期以前は公示価格(国交省が毎年公示する標準地価格)の30%程度、以降は70%とされています。
固定資産税評価額の評価を行う主体は市区町村です。市区町村の担当者が1軒ごとに調べて決定をしています。
1-1.土地の固定資産税評価額
まず標準宅地について不動産鑑定士が正常価格を評価し、 その価格に70%を乗じ、更に 画地補正を施して土地の固定資産税評価額を求めます。
市街地評価には 土地の面積×路線価で求めます。路線価とは土地が面している路線の価値で、国税庁関連のホームページで確認できます。
1-2. 家屋の固定資産税評価額
家屋の場合は、土地と違って経年変化で資産価値が変わります。
そのため、評価の対象となった家屋と全く同一のものを新たに建築しようとした場合において必要とされる建築費( 再建築費)を求め、それに経過年数に応じた損耗の減価等を考慮して計算されています。
さらに細かく書くと、評点1点(1㎡)あたりの価額×床面積×単位面積あたりの再建築費評点×経年減点補正率となります。
最近では建物評価の調査下準備のために、googleの航空写真やストリートビューなども活用されています。
課税標準額 | 固定資産税で使う場合は、固定資産税評価額と同じ意味。「適正な時価である」と表現される。 |
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公示価格 | 国土交通省が公表している毎年1月1日時点の地価。 |
路線価 | 土地が面している路線の価値。 |
正常価格 | 不動産鑑定評価の分類。特に条件のない、正常な取引価格。ほかに限定価格・特定価格・特殊価格など。 |
再建築費 | 評価の対象となった家屋と全く同一のものを新たに建築する建築費。 |
2.固定資産税の計算方法
2-1.土地の場合
土地の固定資産税の算出は以下です。
固定資産税=土地の評価額×固定資産税税率1.4%
評価額が出さえすれば税額計算は単純ですね。
2-2.家屋の場合
家屋も同様の計算です。(税率は土地・家屋ともに同じ)
固定資産税=家屋の評価額×固定資産税税率1.4%
2-3.計算例
新築マンション・新築戸建て・中古戸建それぞれの例です。ここまでの計算方法にさらに軽減措置や特例があり、それらを適用していくとどうなるかをご覧ください。
◆新築マンションでの固定資産税
土地の評価額が2,000万円、家屋の評価額が1,000万円のマンションの場合。 | 2000万×1.4%=28万円・1000万×1.4%=14万円の合計は 42万円。 しかし新築マンションの場合は固定資産税の軽減の特例を受けられるため、土地200㎡以下=小規模住宅用地の特例⇒評価額が6分の1。さらに新築マンションは家屋の評価額が5年間にわたり2分の1の特例がある。 以上で再計算すると、土地約46,000円+家屋70,000円= 約11万円が実際の納税額。 |
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◆新築の分譲住宅での固定資産税
土地の評価額が1,000万円、家屋の評価額が1,500万円の新築分譲住宅の場合。 | 1000万×1.4%=14万円・1500万×1.4%=21万円の合計は 35万円。 戸建も土地・家屋にマンションと同様の特例措置が適用されるため、 土地1,000万円×1/6×1.4%=約23,000円 |
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◆中古住宅の固定資産税
中古住宅で土地が200平方メートル以下で1,000万円、家屋が500万円の場合。 | 1000万×1.4%=14万円・500万×1.4%=7万円の合計は 21万円。 中古住宅の場合、家屋は軽減なし・土地200平方メートル以下の部分は変わらず評価額の6分の1で計算するので、 土地の評価額1,000万円×1/6×1.4%=約23,000円 |
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3.固定資産税評価額と相続の関係
固定資産税評価額は相続の際にも登場します。
土地の相続税評価額を「倍率方式」によって計算する場合(大部分。路線価が定められていない地域の場合)には、固定資産税評価額が計算の基礎になります。
路線価が決まっている場所の場合も、固定資産税を算出する際の基準となる固定資産税路線価は地価公示価格の約7割程度、相続税路線価は地価公示価格の約8割程度となっています。
よって例えば、固定資産税評価額が5,000万円の土地の場合、相続税評価額は以下のように計算します。
50,000,000 × 0.7 × 0.8 ≒ 28,000,000円
4.固定資産税を安くする方法はある?
固定資産税を安くするには、評価額を下げるということになりますね。
自治体が決定している固定資産税評価額ですが、何か方法はあるのでしょうか?
4-1. 軽減措置の適用を受ける
土地の場合
現況が更地の場合は、上に建物を建てて住宅用地の特例を受けることができます。(但し!新しく建った家屋に課税されるのはお忘れなく)
あるいは場所によってはいっそ農地に転用してしまえば、一般的な土地より安い税率を受けられるようにすることなども考えられます。
田舎の農地などほとんど課税されないために、相続したものの「所有していることすら忘れている」というのはよくある話です。
家屋の場合
一定の省エネ改修工事をした際に減税を受けられる「 省エネ改修促進税制」や、耐震リフォームを実施した際に減税を受けられる「 耐震改修促進税制」などを利用する手があります。
軽減措置の中には、一定期間までに申請しなければ適用できないものもあるので、事前に確認をしておきましょう。
4-2. 正しい評価価格か再調査する
昔から永年にわたって所有者が変わっていないような土地は、測量も大雑把で正しい面積が把握されていないこともありえます。
境界の再確認や、面積を測り直して確認することで。面積が減って評価額が下がり、いくらか減税されることも考えられます。
そうでなくとも、あとで隣地との係争を防止する意味もふくめ、古い土地、宅地以外の地目だった土地などは実測をお勧めします。
4-3.クレジットカードで支払う
直接的に固定資産税が安くなるわけではないのですが、クレジットカードの利用ポイントが付与され、その分お得になりますね。
しかしそれだけの目的のカードなら、手数料や年会費も計算に入れましょう。
5.固定資産税評価額についてのまとめ
以上、「固定資産税評価額」というテーマでのお話をしました。税金のお話はどうしても専門用語が多くなりますが、評価額算出のおおざっぱな仕組み、固定資産税の概要は理解をいただけたでしょうか?
一度払い始めてしまえば、5月にちょっと憂鬱になる以外は、つい一年間忘れている固定資産税ですが、新しく払い始める際にはちょっと事情が違いますね。
よくその内容について理解し、たとえば「6年目から増額する!」とか、「戸建は〇年経ったら下がる可能性がある」など、把握をしてメモにしておくのが良いと思います。
何しろ所有している限りずっと、場合によっては何十年も払い続けるものです。ちゃんと元を取れているか、持っていて使っていない不動産があれば、その処遇をよく検討しましょう!
- 固定資産税評価額は固定資産税の課税基礎。市区町村が決める。
- 固定資産税評価額×1.4%で固定資産税の納税額となる。
- 新築・新規取得や面積等の特例で納税額は安くなる。
- その他家屋は省エネ、長期優良住宅の適用、土地は再測量による面積の再計算などでも、評価額が変わる可能性がある。