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不要な土地を相続放棄して手放したい!方法・手順・注意点を解説

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不要な土地を相続してしまって、お困りですか?

自分には使い道がないような土地を相続してしまうと、活用できないのに管理費や固定資産税がかかってやっかいですよね。おまけに市場で売れるような土地でもないとなると、ただお金がかかるだけです。

そこで利用したいのが、「相続放棄」です。相続放棄を行えば、不要な財産(先ほどの土地)は自分が引き受けなくても良くなります。

ただ、相続放棄には一般的にはあまり知られていないルールや手続きが必要になります。何も知らない状態では、相続放棄をするのは難しいでしょう。また、実は、相続放棄をしたらそれで土地については一切責任を負わなくて良くなる、というわけではないのです。相続放棄をしたらもう一つ、相続財産管理人の選任手続きが必要となります。この点も一緒に押さえておかないと、不要な土地に関する責任から逃れることはできないのです。

そこでこの記事では、相続放棄に関する知識を基礎から徹底的に解説します。また、相続放棄と同時に押さえておきたい相続財産管理人の選任についても詳しく説明していきます。この記事を読めば、突然の相続にも対応できるような知識が身につくことでしょう。

ぜひ参考にしてくださいね。

1.相続放棄とは?

1-1.相続放棄とは?

相続放棄とは、被相続人(死亡した人)が残した財産(遺産)を、相続人が一切引き継がないことです。遺産にはお金や土地・建物だけでなく借金なども含まれますので、マイナスになるものを相続したくない場合に相続放棄が用いられます。
土地の相続放棄という場合、被相続人が残した土地を相続人が一切引き継がないことになります。被相続人が、相続人にとって不要な土地(活用できず、売れもしないような土地)を残していた場合、相続放棄をすればその土地の所有を避けることができます。

相続放棄をする場合、不要な相続財産だけを放棄することはできません。つまり、土地を相続放棄すると決めたら他の財産についても放棄しなければならないのです。
相続放棄するかどうかは、すべての遺産をトータルで考えて決めるようにしましょう

1-2.相続放棄の手続き

相続放棄の手続きについてみていきます。

1-2-1.手続きの流れ

相続放棄をするためには、まず家庭裁判所への申し立てが必要です。
申し立ての後、裁判所から「相続放棄受理通知書」が交付されます。これを手にして始めて相続の放棄が成立します。
この時の「家庭裁判所」は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。

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1-2-2.手続きの順番

上記の手続きは、相続人それぞれが単独で行う必要があります。
「相続人」たりうるのは、①被相続人の配偶者、子供②被相続人の親③被相続人の兄弟姉妹の3者です。相続権は①→②→③の順番で移りますので、①~③の順番でそれぞれの相続人が相続放棄の手続きをします(該当する者がいない場合は飛ばします)。

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注意が必要なのは、①~③それぞれ、該当する人全員が相続の放棄をする必要があるという点です。例えば、被相続人に子供が3人いた場合、3人全員が相続放棄をする必要があります。
自分が相続人の①~③のうちどれに当たるかを確認し、自分より先の順位の相続人全員が相続放棄をしたら、自分の相続放棄の手続きを進めましょう。
①被相続人の配偶者、子供が全員相続放棄をし、②被相続人の親が全員相続放棄をし、③被相続人の兄弟姉妹が全員相続放棄をすると、遺産は相続人全員の手から離れることになります。

1-2-3.必要書類とかかる費用

①必要書類
相続放棄の手続きに必要な書類は、以下の通りです。

全員必要な書類・申述書
・被相続人の住民票除票または戸籍附票
・申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本
①被相続人の配偶者、子供に必要な書類<配偶者の必要書類>
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
<子供の必要書類>
・被相続人の死亡の記載のある戸籍(除籍、改正原戸籍)謄本
・被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本 (*申述人が代襲者(孫、ひ孫)の場合)
②被相続人の親に必要な書類・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属に死亡している人がいる場合(相続人より下の代の直系尊属に限る)、その直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
③被相続人の兄弟姉妹に必要な書類・被相続人の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の子(およびその代襲者)で死亡している人がいる場合、その子(およびその代襲者)の出生時から死亡時までのすべての戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・被相続人の直系尊属の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本
・申述人が代襲相続人(おい、めい)の場合、被代襲者(本来の相続人)の死亡の記載のある戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本

*申述書の書式は申述書PDFにあります。
*①②③で重複している書類がありますが、自分より先の順位の相続人がすでに提出している場合は提出の必要はありません。
*各戸籍(除籍、改製原戸籍)謄本は、各人物の本籍地の市町村役場(死亡している者については死亡の時点で本籍があった市区町村役場)で取り寄せることができます。

「代襲(だいしゅう)」とは?表中に何度か「代襲(だいしゅう)」という言葉が出てきていますが、聞き慣れない人もいると思いますので説明しておきます。
代襲とは、本来相続人になるはずの人がすでに死去して存命でない場合に、その子供や孫が代わって相続人になる制度です。被相続人(死亡者)の子供が被相続者より先に亡くなっている場合、被相続人の子供の子供(被相続人から見れば孫)が代わりに相続人となるのです。この場合、相続放棄の手続きは被相続人の孫が行うことになります。

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相続放棄の申し立ては一度しかできないのでご注意相続放棄の申し立ては、一度しかできません。相続放棄の申し立てが家庭裁判所で却下されてしまった場合、高等裁判所に抗告の申し立てをし、それでも却下されてしまうと、再度相続放棄の申し立てをすることはできなくなるのです。
とはいえ、書類の不備や記載漏れは、家庭裁判所への提出時にきちんと指摘を受けることができます。書類を慎重に書くに越したことはありませんが、必要以上に気構える必要はありません。

裁判所から「相続放棄申述受理証明書」を受けるためには、相続放棄した人が家庭裁判所に申請をする必要があります。申請に必要な書類は、以下の通りです。

・申請書1通(裁判所から取り寄せます)
・150円分の収入印紙
・申請人の戸籍謄本(3ヶ月以内に発行されたもの)
・委任状(代理人に依頼する場合に必要となります。まお、代理人になれるのは弁護士か申請会社の社員のみです。)
・利害関係の存在を証明する書類(金銭消費貸借契約書、競売申立書など)
・相関関係図
・申述人の相続放棄申述受理通知書の写し

申請の注意点申請における注意点をまとめておきます。
・申請は郵送でも行うことができます。その場合、82円分の切手と返信用封筒を添えましょう。
・もし申述人の相続放棄申述受理通知書の写しを添付できない場合、
㋐被相続人の戸籍(除籍)謄本
㋑申述人(相続放棄人)の戸籍謄本(3ヶ月以内に発行されたもの)
㋒被相続人の住民票除票または戸籍の附票
が必要になります。
・申請するのが法人の場合、戸籍謄本に代わって資格証明書または商業登記簿謄本(3ヶ月以内に発行されたもの)が必要になります。
・もし申請書に記載する「事件番号」、「受理年月日」が不明な場合、申請前に家庭裁判所に対して「相続放棄等の申述の有無についての照会」を行いましょう。

②かかる費用
相続放棄の手続きにかかる費用は、以下の通りです。

収入印紙800円(申述人1人あたり)
連絡用郵便切手82円分を数枚分
*家庭裁判所により異なる場合があります
依頼料
(弁護士、司法書士、行政書士に手続きを依頼する場合)
・相続放棄についての相談、書類の作成、親戚への相続放棄通知まで依頼した場合は1万円前後
・上記必要書類の収集、書類提出など必要手続きのすべてを代行してもらった場合は3~4万円前後

1-3.申し立て期間

相続放棄をするには、相続人が「相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内」に家庭裁判所に申し立てる必要があります。

これを定めた民法の規定(915条1項)が以下になります。

相続人は、自己のために相続の開始があったことを知った時から三箇月以内に、相続について、単純若しくは限定の承認又は放棄をしなければならない。出典:法庫

この期間内に放棄がなされなかった場合、相続を承認したものとみなされます。

通常、「相続の開始があったことを知った時」とは「被相続人が死去した日」となります。相続人・被相続人の関係で被相続人が死去したことを知らないということは通常ありえないとされるからです。

ただ、実際には被相続人の死後3ヶ月を経過してから相続を放棄したいとなる場合もあるでしょう。例えば、親子の縁を切っていたため親が死んだことを知らなかった場合や、死後3ヶ月経ってから親が残した借金が見つかった場合などです。
こういった場合、「相当の理由」があれば例外的に「3ヶ月」という期間の起点を遅らせられる場合があります。いくつかの判例ではこれが認められているのです。
上記のような事情があって例外措置を受けたい場合は、司法書士に相談するようにしましょう。

2.相続放棄すれば終わりというわけではない?

相続放棄の手続きを終えれば無事に土地を手放せるかといえば、実はそうではありません。完全に土地を手放すには、もう一つ必要な手続きがあるのです。

2-1.相続財産の管理責任

土地を相続放棄すれば、土地にかかる固定資産税の支払い義務はなくなります。
ただ、相続放棄しただけでは免れられない責任が一つあります。それは、相続財産の管理責任です。つまり、土地の管理は引き続き相続人が行わなければならないのです。

相続財産の管理責任について定めたのが、民法940条1項です。

相続の放棄をした者は、その放棄によって相続人となった者が相続財産の管理を始めることができるまで、自己の財産におけるのと同一の注意をもって、その財産の管理を継続しなければならない。出典:法庫

管理責任を負う相続人が管理を怠った場合、損害賠償責任や刑事責任を負わされてしまう可能性があります。相続放棄したから、土地について自分には何も責任がないと考えていると危険です。

相続財産の土地に関するすべての責任を逃れるためには、相続放棄に加えてもう一つ手続きが必要になります。それが、相続財産管理人の選任の申し立てです。

2-2.相続財産管理人

「相続財産管理人」という言葉を聞き慣れない方も多いと思います。
相続財産管理人とは、家庭裁判所から選任され、相続人がいるか明らかでない相続財産の管理を行う者です。一般的には、地域の弁護士が就任します。

相続人が相続放棄をすると、その相続人は「初めからいなかったもの」とされるので、相続人全員が手放した土地は「相続人がいるか明らかでない相続財産」として相続財産管理人によって管理されることになるのです。

2-3.相続財産管理人の選任の申し立て

土地の管理を相続財産管理人に任せるためには、家庭裁判所に対して「相続財産管理人選任の申し立て」を行う必要があります。具体的には、選任申立書という書類を書いて提出します。手続き自体にかかるお金は1万円もしない程度です。

2-4.予納金の発生

手続き自体は上に書いた通りですので、「なんだ、簡単じゃないか」と思われるかもしれません。ただ、相続財産管理人選任の申し立てには一つ大きな問題があります。
それは、予納金が発生するということです。

相続財産を管理するにはある程度お金がかかります。例えば土地の場合は土地の管理をする費用などです。このコストは相続財産管理人が相続財産をお金に変えることで支払いますが、万が一その財産がほとんどお金にならなかった場合に備えて、申立人が予納金を支払う必要があるのです。

予納金の額は相続財産にもよりますが、だいたい30万円から100万円程度といわれています。決して安くはありません。

相続放棄した土地が管理費用をまかなえるだけのお金になれば予納金は返還されますが、相続放棄されてしまうような土地ですので、ほとんどお金にならない場合が多いです。よって、予納金は返ってこないと考えた方がよいでしょう。

相続放棄という道を選択する場合、予納金のコストまで考えた上で決定するようにしましょう。一度相続に強い弁護士に相談するのもおすすめです。

3.土地の相続放棄についての注意点

ここまで土地の相続放棄について全体的な解説をしてきましたが、ここからは細かい注意点をご紹介していきたいと思います。

3-1.相続放棄の取り消しについて

相続放棄申述書を提出した後、やっぱり相続放棄したくないと考え直した場合、相続放棄の取り消しはできるのでしょうか。
結論からいうと、相続放棄申述書を提出してから受理されるまでの間(提出から約1ヶ月の間)であれば、相続放棄を取り消すことができます。相続放棄が裁判所に承認されてしまった後では、相続放棄を取り消すことはできません。

ただ、これには例外があります。例えば、以下のような場合です。
●詐欺を受けて相続放棄してしまった場合
●相続放棄するように脅迫を受けて相続放棄した場合
●法定相続人の同意なく未成年が相続放棄してしまった場合

3-2.相続放棄と代襲相続について

代襲相続とは、本来相続人になるはずの人がすでに死去して存命でない場合に、その子供や孫が代わって相続人になる制度です。

自分が相続放棄をすると、相続人である自分は「初めからいなかったもの」とされてしまい、代襲相続で自分の子供や孫に相続がいってしまうのではないか、と心配される方もいるかもしれません。
ただ、相続放棄しても代襲相続はされませんのでご安心ください。
代襲相続は「相続人が死亡していた場合」の制度であり、「初めからいなかったもの」とする相続放棄では適用されません。

4.欲しい財産だけ受け取る方法

ここまで相続放棄についてみてきましたが、相続にあたって「できれば欲しい財産だけ受け取りたい」というのが本音ですよね。
実は、将来の被相続人が生きているうちに、欲しい財産だけ受け取る方法があります。それは、以下の2つです。

4-1.遺贈を利用する

遺贈とは、遺言によって、遺言者の財産の全部または一部を贈与することです。
遺言者に「○○(財産)を△△(将来の相続人)に遺贈する」と書いてもらえば、欲しい財産については遺贈で受け取り、いらない財産は相続放棄で手放すことができます。

4-2.生前贈与

生前贈与とは、生きているうちに財産を贈与することです。
生前贈与は口約束でも成立しますが、トラブルを避けるために贈与契約を作成しておくのが望ましいでしょう。また、贈与する財産が不動産の場合、登記を移転させておかなければ贈与の効力がありませんので、注意しましょう。
生前贈与しておけば、欲しい財産を受け取ることができます。ただ、贈与した財産には贈与税が課せられますので、確認しておきましょう。
参考:国税庁「贈与税」

5.まとめ

土地の相続放棄について書きましたがいかがでしたか。
この記事が、土地を相続してお困りになっているすべての方の参考になれば幸いです。

  • この記事を書いた人
松崎サブロー

松崎サブロー

イエベストの編集長です。宅地建物取引士。不動産会社では不動産投資、不動産売却、不動産賃貸、不動産管理など幅広く担当。 不動産に関わる難しい知識を初心者にもわかりやすい正しい情報として提供することを心がけています。

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