住んでいるマンションがマンションが建て替えられることになったら、費用は住民が負担するの?工程は?
そもそも、マンションの寿命ってどれくらいなんだろう?
などなど、「マンションの建て替え」に関して、さまざまな疑問を感じていらっしゃいませんか。
そこで本日は、マンション建て替えに関する知識を紹介していきます!
目次
1.マンションの寿命
マンションにも、寿命があります。では、実際には、どれくらいの期間住むことができるのでしょうか。
1-1.建て替え基準は60年
マンションの寿命を考えるときに客観的な指標となるのが、国土国交省による基準です。
国土国交省によると、マンションの建て替え基準は、60年とされています。
あくまで基準であるため、電気、水道、ガスなどの状態がよく耐震性などの問題もなければ、60年以上住むことも可能です。
1-2.コンクリートの寿命は約100年。しかし、実際は30年程度で建て替えられる
建て替え基準は60年ですが、実は、コンクリートマンションの場合、寿命は約100年もあります。
さらに最近では、200年の耐久性をもったコンクリートが生まれ、大手ゼネコンでは500年耐用のコンクリートの開発も進んでいます。
マンションの寿命は、鉄筋を包むコンクリートの「かぶり厚」の大きさによって決まります。厚いほど耐用年数が伸び、わずか1cm厚くなるだけで、35年も耐用年数が伸びるのです。
かぶり厚 | 耐用年数 |
3cm | 65年 |
4cm | 100年 |
しかし、いざ実際に建て替えられたマンションを調べてみると、平均で37年程度となっています。
100年も住めるはずなのに、どうして30年程度で建て替える必要があるの?と疑問が湧くはずですね。
理由として大きいのは、耐震性の問題です。
マンションは1960年代から普及しましたが、当時は現在ほど耐震設備などが重要視されておらず、法整備が追いついていませんでした。当時の耐震性を基準にしたマンションの6~8割は、現在の基準で考えると耐震性がないと言われています。
結果的に、約30年程度で耐震性の面での危険性が高まり、建て替えがおこなわれるようになったのです。
2.マンションを建て替えた事例はわずか0.23%の理由
マンションの建て替えは、老朽化問題などから現実的に検討されるべき課題ではあります。しかし、実際のところ、建て替えがおこなわれた事例はわずか252件(※平成28年4月1日時点)、全体の0.23%しかありません。
ここでは、その理由を解説します。
2-1.住民の合意形成が難しい
マンションの建て替えをおこなうには、「区分所有者の4/5以上の賛成が必要」になります。
そこではじめて、「マンション建替え円滑化法(※1)」に基づいてマンション建替えをおこなうことができます。
100戸のマンションがあった場合、80戸の賛成が必要になる計算であり、同意形成が非常に困難になります。
その理由は、次に紹介する「経済的な問題」が大きいです。
(※1)マンション建替え円滑化法・・・建て替えを円滑にすすめるための様々な手続きや方法が定められた法律
参照:一般社団法人マンション再生協会
2-2.高齢化と経済的な問題がある
マンションの建て替えには最低でも1,000万円以上必要です。この金額は、年金暮らしの老人にとっては負担が大きいです。
ローンを組むことができれば解決できるかと思うかもしれませんが、高齢化している場合、ローンを組むことも難しくなるため現実的ではありません。
3.マンション建て替えの費用は1戸最低1,000万〜
マンション自体の建て替え費用は、基本的な相場として1戸1,000万円程度です。
さらに建設中に仮住まいする物件の家賃、引っ越し代金などが加算されます。
期間が長ければ長いほど費用は増すため、一概には言えませんが、総予算としては1,200~1,500万円ほどみておくとよいでしょう。
ただし、マンションを建て替える際に、所有者負担がかかるかどうかは、建て替え後のマンションに戸数が増やせるかどうかによります。
戸数が増やせる場合は、新しい入居者からの収入があるため、負担額がなくなる場合があります。
3-1.所有者負担がある場合
戸数を増やして新しい入居者から収入を得られない場合、所有者が費用を負担しなければなりません。
費用は、さきほど紹介したように、総予算として1,200~1,500万円ほどみておくとよいでしょう。
3-2.所有者負担がない場合
マンションの土地面積に対して建設可能な延床面積をさす「容積率」が高く、新しく戸数を増やすことができた場合、所有者負担がなくなることがあります。
新しく増やした戸数分の収入で、マンションの建て替え費用を賄うことができるからです。
実際に、多摩ニュータウンの諏訪2丁目住宅が建て替えをした際には、640戸が1249戸と約2倍に増え、新しく増やした戸数の売却益があったため居住者負担が0になったケースがあります。
持ち出し金なしで新しい物件に引っ越すことができるため、所有者にとっては嬉しいケースです。しかし、実際には、戸数を増やすことができるほど恵まれた条件の物件は少ないです。
4.マンション建て替え4つのステップ
マンションが実際に建て替えることになるのは、4つのステップがあります。
4-1.準備段階
マンション所有者が集まり勉強会をおこない建て替えに関する基礎知識を学ぶ、現状の問題点を確認する段階です。
準備段階での目的は、管理組合としてマンションの再生を正式に検討することの合意を得ることにあります。
4-2.検討段階
マンションの現状を調べるため耐震診断、アンケート調査等をおこない、専門家からもアドバイスを受ける段階です。
検討段階の目的は、マンションの建て替えが修繕・改修と比べて妥当なのかを判断し、本格的に建て替える計画を立てる合意を得ることです。
4-3.計画段階
不動産デベロッパーを選定、建て替え後のマンションのイメージ、費用、などを具体的にしていく段階です。
計画段階の目的は、建て替え計画案の作成、計画を実際におこなうかどうかの合意を得ることです。
4-4.実施段階
マンション建替え円滑化法に基づき、「権利変換計画」を作成し、マンション建替え組合を設立、実際にマンションの建て替えの工事がはじまる段階です。
実施段階の目的は、実際に建て替えをおこない、新しいマンションへの再入居、新管理組合の設立をおこなうことです。
5.マンション建て替え費用が払えない場合は、売却・立ち退きも考える
もしも、現在住んでいるマンションが建て替えすることになり、費用が払えない場合、売却、立ち退きも可能です。
住民の4/5以上の同意が得られ、建て替えすることになったとしても、必ずしもすべての住民が建て替えに参加しなければいけないわけではないからです。
ただし、満60歳以上の高齢者の場合は、「高齢者向け返済特例制度」があり、費用がなくても立ち退かなくてもいい可能性があります。
この制度では、1,000万円を上限に融資がおこなわれ、元金は申込者が亡くなった際に相続する人が一括返金するか、担保提供した建物・土地を処分して返済されます。月々の返済は利息のみになるので、負担を低く抑えることができます。
また、自治体による支援・助成制度もあるので確認しましょう。
参照:マンション再生協議会
6.マンション売却のコツ
マンション建て替え費用が払えず、売却することになったら必要なステップを紹介します。
6-1.相場を調べる
マンションを適切な価格で売却するためにも、相場を知ることは必要不可欠です。
相場の簡単な調べ方は次の2つです。
・所有する物件と似た近隣物件の「過去」の取引価格を調べる
・所有する物件と似た近隣物件の「現在」の売出し価格を調べる
そして、具体的に価格を調べるツールとしては、次の3つが便利です。
・レインズ
・土地総合情報システム
・中古住宅HOME4U
より詳しく知りたい方はこちらの記事もチェック!:マンションを売りたいと思ったときに覚えておくべき全知識
6-2.相性の良い不動産会社を見つける
マンションを自力で売却することは難しいため、不動産仲介業者を見つける必要があります。
大手不動産会社、中小不動産会社、地域密着の小規模不動産会社など、タイプの違う不動産会社がありますが、重要なのは、会社の規模に惑わされないことです。
実際に一度相談してみて、1番親身になって話を聞いてくれるところを選びましょう。
6-3.物件の強み・弱みを考える
マンションを高く売却するためには、物件の強みと弱みを把握して、強みを上手にアピールする必要があります。
内装、外装だけでなく、コンビニ、スーパー、学校、など便利な周辺施設の充実度もアピールポイントになります。担当の不動産仲介会社と話し合って、上手に強いミを表現できる方法を見つけましょう。
6-4.室内を綺麗に保つ
マンションの売却をおこなうことになったら、内見に来る人に良い印象を残すために、室内を綺麗に保つことが重要です。
いくら広告での写真が綺麗でも、実際に見てみると汚かったら、購入意欲がなくなってしまう可能性があります。
内見にくるということは、購入意思が少しでもあるということです。非常にもったいないので、室内を綺麗に保つようにしましょう。
7.マンションを買う場合の注意点
マンションを建て替えること選ばず売却し、次のマンションを買う場合に注意するべき点を紹介します。
7-1.マンションの管理状態を見る
マンションは、管理状態で物件の価値が大きく変わります。
内見をする際に、「共用部」もあわせてチェックしましょう。次の9点を見て、なにか異変を感じるようであれば、注意した方がよいでしょう。
・外観
・エントランス
・ゴミ置き場
・駐輪場
・駐車場
・植栽
・掲示板
・エレベーター
・管理人
外観
1番分かりやすいのが、外観。大きな汚れ、ひび割れ、サビなどがないかをチェックしましょう。
エントランス
エントランスは、マンションの入り口であり「顔」とも言える場所です。ゴミが散乱していたり、床が汚れていないかを確認しましょう。
ゴミ置き場
ゴミ置き場に、ごみが溢れかえっていたら、管理が行き届いていない可能性が高いです。どのようなスケジュールでゴミ回収がおこなわれているのか確認しましょう。
駐輪場
駐輪場にとめてある自転車やバイクが、綺麗に並べられているかをチェックしましょう。
駐車場
駐車場は「平置き」と「機械式」に分けられます。機械式の場合、メンテナンス費がかかることになり、管理費も高くなります。
植栽
マンションの共用部に植えられている植物にも、管理状態があらわれます。
植物の状態が良いということは、しっかりと管理されていることの証拠になるので、チェックしましょう。
掲示板
マンション内に掲示板がある場合、掲示板を見ると入居者同士の交流の様子が分かります。コミュニティ活動が活発かどうかは、管理の良さを調べる一つのポイントになるのでチェックしましょう。
エレベーター
エレベーターの床、壁、階数を指定するボタンが綺麗かどうかをチェックしましょう。
管理人
管理人と会うことができる場合、実際に会って話をしてみましょう。笑顔で挨拶してくれたり、感じが良い場合、しっかり管理してくれている可能性が高いです。
8.まとめ
マンションの建て替えは、合意形成の難しさと経済的な問題から、実際におこなわれた事例は0.23%しかありません。
運良く所有者負担なしで建て替えられたケースもありますが、戸数を増やせるだけの容積率があることが前提で、非常に稀なケースとなります。
マンション購入の際は、建て替えを前提に、万が一の場合は売却することも念頭におくことが必要ですね。