不動産投資と聞くと自己資金(貯金)がなければ手を出せないと思われている人は多いのではないでしょうか。
たしかに実際に最低限の自己資金が必要なのも事実です。
しかし、結論からいうと自己資金がなくても不動産投資を行うことは可能です。
また、可能ではありますが、おすすめはしません。
できれば自己資金を用意してはじめるのが理想です。
この記事では、不動産投資と自己資金との関りについて詳しく見ていきます。
目次
1.不動産投資における自己資金について
はじめに、不動産投資の自己資金とは何を指すのか見ていきましょう。
1-1.不動産投資における自己資金
一般的に自己資金とは自分で所有している資金のことを指しており、不動産投資における自己資金は意味合いが異なります。不動産投資における自己資金は、投資物件を購入する際、ローンの他に用意する現金のことです。
ちなみに、ローンは自分のお金ではないため、他人資金となります。
なお、不動産投資の自己資金で主に支払う費用の2種類[頭金と諸費用]について見ていきましょう。
1-2.自己資金の頭金について
頭金は物件の購入代金からローン借入額を引いたお金、つまりローンの借入以外の方法で用意するお金です。頭金には所有している現金の他、親などからの資金援助も含まれます。頭金はいつでも支払えるわけではなく、不動産の売買契約から引き渡しまでの間に支払わなければいけません。
例えば、不動産投資を行う物件として2,000万円の物件を購入する際、1,500万円をローンで借りて購入する場合、頭金は500万円となるのです。
金融機関やローンの種類によって、ローンで借入できる金額が異なってくるため、必要となる頭金も違ってきます。
場合によっては頭金がなくても不動産を購入できるケースがあるものの、不動産投資の多くは頭金の支払いが必要です。
1-3.自己資金の諸費用について
不動産投資の諸費用は、土地・建物の購入価格や建設費用などは含まれず、その他に支払いの必要がある費用です。
具体的には、不動産仲介会社に支払う仲介手数料、不動産登記費用(登録免許税や司法書士報酬など)、契約書に添付する印紙税や住宅ローンの借入費用(保証料、手数料、火災保険料)などが該当します。
新築マンションを購入する際には、修繕積立準備金などの支払いが物件の引き渡し時に行われます。
2.不動産投資の自己資金は1,000万円必要なのか
不動産の購入には多額の費用がかかるため、その分自己資金を用意しなければならないと考える方も多いでしょう。その目安として、1,000万円を指標にする方も多いです。
1,000万円の自己資金があれば、不動産投資の資金をローンとして借入する際、多くの金融機関で審査に通ります。
しかし、必ずしも1,000万円の自己資金がなければ、不動産投資ができないわけではありません。そもそも、物件の価格によって必要な自己資金は変わってきます。
逆に不動産投資の自己資金の比率を上げすぎると、レバレッジ効果の恩恵を受けにくくなる可能性があるのです。
不動産投資とレバレッジ効果の関係については次にご説明します。
3.不動産投資のレバレッジ効果について
不動産投資の強みがレバレッジ効果です。そもそも、レバレッジ効果とはてこの原理のことを言います。てこの原理は小さい力で大きな力を生み出しており、投資でも同様に少ない資金で大きな利益を上げることを言います。
不動産投資におけるレバレッジは「融資」を利用することであり、自己資金だけでは購入できない物件でも、融資を受けて購入できれば、大きな利益を生むのです。
3-1.ローンを利用すると利益が増える
ローンの有無でどれくらいの差が出るのか、自己資金が1,000万円のケースで考えていきます。
ローンで融資を受けずに自己資金1,000万円で利回り10%のマンションを購入した場合、年間の家賃収入は1,000万円×10%=100万円となります。
一方、自己資金1,000万円の他に金利3%のローンで3,000万円を借り、利回り10%の4,000万円の物件を購入した場合、年間の家賃収入は4,000万円×10%=400万円。利息分の120万円を差し引いても、実質の収益は280万円です。
実際には、諸費用や税金などの費用が発生するものの、同じ自己資金1,000万円でもレバレッジをかければ、このように大きな利益を生み出せます。
このレバレッジの活用が不動産投資を行うに当たっての重要なポイントです。
3-2.ローン利用時の注意点
ローンを利用した場合、毎月一定額を返済する必要があります。
自己資金で購入しているわけではないため、家賃などで収入がない場合でも継続的な返済が必要です。
不動産投資では、毎月の返済額を所有物件の家賃収入で支払うため、空室などがない状態であれば、問題なく返済できるでしょう。
逆に所有する物件が空室になるなど収入が減少すると、返済が難しくなります。
ローンからの借入額が多いと毎月の返済額も増えるため、最悪の場合は支払いきれず自己破産に陥るケースもあります。
また、ローンを利用する際に注意したいのが金利上昇です。金利が上昇すればするほど、毎月の返済額が大きく上がります。
例えば、1億円の物件を融資期間30年で金利1.5%で借入した場合、毎月の返済額は約34万円で、この金利が3%に上昇すると毎月の返済額は約42万円です。この場合で考えると金利が1.5%上昇しただけで、月々の返済額が8万円も多くなっています。
このように金利が少しでも上昇すれば毎月の返済額も上がっていくため、レバレッジを効かせるのであれば、金利の上昇も視野に入れて物件を購入する必要があります。
4.不動産投資は自己資金ゼロでも行えないことはない
不動産投資は自己資金がゼロでも行うことができます。
4-1.自己資金ゼロの場合はオーバーローンを利用
不動産投資を自己資金ゼロで行うのであれば、オーバーローンを利用することになります。
オーバーローンは、物件の購入費用だけでなく、諸費用まで融資でまかなうため、物件購入時に必要な現金はありません。
オーバーローンについては以下の記事で詳しく解説しています。
ちなみに、不動産の満額だけを融資してもらい、諸費用を自分で支払うフルローンもあります。
働きながら不動産を購入できるので、オーバーローンはサラリーマンの方に人気があります。
4-2.全額融資を受けるメリット
不動産投資の自己資金をゼロにできるオーバーローンのメリットは、自己資金を温存しながら物件を購入できることです。
オーバーローンを利用すれば、次に購入を検討している物件の自己資金を一からためる必要がなく、融資額が少なくてもその分の資金を補填できます。
また、手元に資金があるので、仮に家賃滞納や突発的なトラブルなどがあっても、現金で支払うことが可能です。
4-3.融資のみで物件を購入する際のリスク
自己資金ゼロで不動産投資ができるオーバーローンには、借りる金額が多くなる、月々の返済額が多いことなどがデメリットとして挙げられています。
しかし、実際は利回りが高いなど収益性のある物件であれば、借りる金額が高くても返済額比率が低ければ、問題なく返済できるでしょう。
オーバーローンで本当にデメリットとなるのは、収益性の低い物件を高額で購入することです。
収益性の低い物件では、自分の手元に残る資金が少なく、その中から返済用の資金や各種費用を捻出する必要があります。
そのため、空室などで収入が減少すると返済が滞ったり、自己破産に至ることがあるのです。
オーバーローン利用して物件を購入するのであれば、この点は把握しておくべきでしょう。
5.審査に通らないとローンは利用できない
貯金だけで不動産投資を行うほどの資金はなかなかありませんので、ローンの利用を検討している方がほとんどだと思います。
しかし、ローンを利用できるとは限りません。
ローンを利用するには審査を受ける必要がありますが、一般的には次のようなポイントが審査基準とされています。
- ・勤務先・資産状況・収入
- ・物件の資産価値
- ・物件の収益性
勤務先・資産状況・収入に関しては個人の経済状況を示しており、家賃収入が得られない場合にローンの返済が安定して行われるかどうかが審査されます。
物件の資産価値は、投資する物件がローンの返済に相当する資産価値があるのかを金融機関が審査します。なぜならば、何らかの理由で家賃収入が得られなくなった場合、金融機関は担保とした物件を売却することでローンの回収を行うからです。
家賃収入を元にローンの返済を行うことになるので、金融機関は投資する人が家賃収入で十分な利益を得られるのかを審査します。
つまり、審査されるポイントは、融資した資金の返済が行われるのどうか、購入する物件への投資が問題ないかという点です。
審査結果次第では希望する金額の融資を受けられる場合もあれば、融資を断れる場合もあります。
例えば、収入が300万円しかないのに、1億円の物件をローンで購入しようとしても間違いなく審査には通りません。
自分の現在の状況や購入する物件に見合った金額であれば、ローンを利用できるでしょう。
オーバーローンの利用を検討するのであれば、自分に見合った物件の購入を検討した方が良いです。
6.自己資金の比率は2割~3割が目安
物件購入時に必要な自己資金には頭金と諸費用があり、それぞれに必要とされる比率が異なっています。頭金の一般的な比率は、物件価格の1割~2割であり、諸費用の一般的な比率は、物件価格の6%~8%です。
例えば、3000万円の物件であれば、頭金は300万円~600万円程度、諸費用は180万円~240万円程度が必要です。
そのため、必要な自己資金の比率は2割~3割と言われています。
7.1,000万円の物件の場合は、自己資金の目安として300万円あると理想
必要な自己資金の比率は2割~3割であり、仮に1,000万円の物件であれば、200万から300万円を自己資金として用意する必要があります。
1,000万円の物件の場合、自己資金が200万円でも審査に通る可能性はあるものの、300万円以上の自己資金がある方が審査に通りやすいでしょう。
8.不動産の自己資金をためる方法
自己資金をためるには、収入を増やしつつ、支出を減らす必要があります。
8-1.収支の管理が必要
収支を把握すれば、どの程度の収入があり、どの程度使っているのかが判明します。こうした収支を把握せずに自己資金をためようとしてもうまくためられず、途中で挫折してしまうでしょう。
継続的に資金を増やしていくためにも、収支の把握は必要です。
8-2.貯蓄と節約で自己資金を増やす
自己資金を増やす際は、貯蓄、節約が大切です。貯蓄に関しては、貯蓄専用の口座を開設するのが有効です。貯蓄用の口座を開設した後、ある程度の金額を月ごとに振り込むようにすると確実に資金がたまっていきます。無理のない金額であれば、生活も圧迫しないため、おすすめの方法です。
節約する際に重要なのが、固定費を浮かせることです。固定費は、光熱水費などの生活していく上で必ず支払う必要がある費用のことを言います。固定費を節約することで、自己資金をためやすくなります。
例えば、アパートやマンションなどの賃貸に暮らしているのであれば、家賃が安い物件に引っ越せば月々の費用が節約でき、生命保険・自動車保険などの保険料を見直すと大きく費用を減らせるでしょう。また、スマートフォンなどでは格安SIMに乗り換ると料金を半額以下にできる可能性があります。
固定費の中でも費用を削れるものは他にもあるため、これらを見直すだけでも数万円の節約が可能です。
8-3.投資でも自己資金を増やすことが可能
自己資金を増やすためには投資も有効な手段です。投資方法としては、自分で運用しなくても資金の運用をプロが行ってくれる投資信託、一万円からでも投資が可能なロボアドバイザー、案件によっては安定した配当金が受け取れるソーシャルレンディングなどさまざまな投資手段があります。
銀行の預金の利率は低いので、銀行預金を行っても資金は増えません。こうした投資を有効に活用すれば、自己資金を増やすことができるため、自分に合った投資を行い自己資金を増やして行きましょう。
9.まとめ
不動産投資では自己資金ゼロでも投資することは可能です。しかし、自己資金がゼロの場合、借入金額や返済額が大きくなるため、投資物件の選択を誤ると返済が難しくなります。
そのため、不動産投資を行う際は自己資金がある方がリスクを少なくできます。
不動産投資における自己資金の目安は物件価格の2割~3割と言われていますが、まずは300万円をためることから始めてください。
自己資金がない場合、ローンを利用する方法がありますが、審査に通らなければ利用できません。
また、審査に通っても希望する金額が借りられない場合もありので、オーバーローンの利用を検討する際は注意が必要です。
リスクを軽減させ、安心して不動産投資を行うのであれば、ある程度の自己資金が必要となるので、自己資金をためてから投資を行うようにしましょう。