自前の汚水処理施設の代表、「浄化槽」ですが、下水道のない・使えない地域でまだまだ結構活躍しています。
「下水道」とも、昔ながらの「ポットン便所」とも違う浄化槽の中で、何が行われて水がきれいになっているか、ご存知ですか?
「浄化槽に汲み取りは必要? 値段や割合はどのくらい?」
「下水道・浄化槽・汲み取り式の違いと特徴は?」
「浄化槽の汲み取りは何をするのか?自分でできることは?」
「汲み取りの費用は何の経費?」
自宅や勤務先が浄化槽設置でも、その仕組みや維持を知らない人の方が多いのではないでしょうか?しかし、 知ることで設備維持のコストが浮いたり長持ちしたりします。気になるところですね?
今回は「浄化槽 汲み取り」と題して解説します。下水処理は知って得する建物設備の基礎。目が離せません。
目次
1.浄化槽に汲み取りは必要?
浄化槽に汲み取りは「必要」です。
汲み取りは昭和のなごりの汲み取り式便所の為だけのものではないのです。浄化槽は手軽に設置できて臭気も少ないのですが、定期的な汲み取りやメンテナンスが必要になります。
1-1.溜めたまま放置すると?
浄化槽を汲み取りしないで放置すると、これは汲み取り便所も同じですが汚泥で溢れ、水分がなくなり、中が詰まったり浄化槽のふたから汚水が溢れたりします。
浄化槽は側溝に処理水を放流しますが、その処理水にも汚泥が混じり水質汚濁の原因になるのです。これは環境汚染になるので、放置すると法律で場せられる場合もあります。
一度溜めすぎた場合、復旧の手間が大きくなるため清掃費用も高くなります。普段意識しない設備ですが、放置すれば結構色々大変なことが起きます。
1-2.浄化槽とは?
建物から出る汚水処理は、「下水道」「浄化槽」「汲み取り式」の3方式があります。
最終的には下水道に整備していく方向なのですが、全国平均で3割程度が下水道がない=「浄化槽」か「汲み取り式」を使用しています。
昔からの汲み取り式トイレは文字通り汲み取りのみでメンテナンスを行うのですが、浄化槽は好気性微生物=バクテリアの力を利用して汚物を分解し、処理後のろ過水だけを水路に放流します。
トイレ専門の単独浄化槽と、生活排水も一緒に処理する合併浄化槽があり、新設できるのは環境保護性の高い合併浄化槽のみです。(単独浄化槽の場合、生活排水はそのまま水路放流となるため。平成13年4月以降設置禁止。)
浄化槽は容量によって〇人槽という大きさの単位があります。設置基準は家屋の延べ面積で決まり。130㎡までは5人槽、それ以上では7人槽というのが一般的です。
2.汚水処理の方式【下水道・浄化槽・汲み取り式】
汚水処理の歴史、用途によって、主に下水道・浄化槽・汲み取り式の3種類が併存しているのですが、それぞれの違いは以下です。
方式 | 下水道 | 浄化槽 | 汲み取り |
利用人口 (平成30年) | 1億1,608万人 | 1,176万人 | 約1,100万人 |
メリット | 汲み取り・メンテ不要 | ・下水道未整備地域でも排水可能 | ・非常時にも使用が可能 |
デメリット | ・接続時に受益者負担金 | ・メンテ・汲み取り要 ・設備は個人負担 | ・汲み取り要 ・臭気 |
コスト(6人) | 3,542円/月 | 4,912円/月 | 4,000円/月 |
比較すると、どれも一長一短、というところでしょうか。
下水層が完備された地域では、下水道への切り替えが義務なのですが、その際の受益者負担金は土地の面積に応じて金額が決まります。
現在の相場で市街化区域内の土地であれば、1平方メートル当たり350円、市街化調整区域内の土地であれば、1平方メートル当たり380円となっています。
※紫色か青色が、全国平均上の普及率の自治体です。財政状況とは関係ないように見えます。
しつこいけれど、日本国内における下水道普及率の図がこちら。東京をはじめ大都市に住んでいると慣れっこになってしまうが、汲み取り式便所や浄化槽とサヨナラできる生活は、いまだに下水道未普及のところではかなりハードルが高い。自治体ごとに見ていくと下水道計画そのものが「ない」ところも多い。 pic.twitter.com/ouFipwRi4t
— 早川タダノリ (@hayakawa2600) 2020年5月30日
3.浄化槽汲み取りの内容
浄化槽の汲み取り作業を簡単に言いますと、
まずバキュームカーで溜まってきた汚泥をくみ取り、空間が出来上がった後で浄化槽の内壁面を高圧洗浄等で清掃します。
槽内に空気を送り込んで浄化バクテリアを働かせるためのブロワー等の点検をし、最終のばっ気槽に塩素の薬剤を補充します。最後に槽内の変形防止に水張り=水道水の注水をして終了です。
※【閲覧注意】小型合併浄化槽、バキュームカーで抜き取り、清掃
業者さんによって清掃のやり方に開きがあり、それによって値段に違いが出るので、自分で知識を持って説明やお願いをすると、金額が安くなったりします。また、選ぶ際も自治体のホームページや浄化槽保守点検業者名簿から業者を確認しましょう。
5人槽であれば清掃・汲み取りの費用の目安は2万円〜5万円ほどですが、7人槽や10人槽など大きくなるにつれて、その費用は高くなり、時間もかかります。7人槽で1時間弱というところでしょうか。
清掃中は、トイレを使う程度はいいのですが、汲み取り作業中にふろ水や洗濯水の排水を行うと時間も延び、料金も高くなります。(逆に水張りが始まってから行うと良い)
4.浄化槽汲み取りは自分でできる?
汲み取りの作業自体はバキュームカーがないとできないので無理ですが、管理作業は、自己所有のものに限り無資格で行うことができます。
槽内のバクテリアを維持する為のブロアモーターの交換は自分で簡単にできます。
これは原理としては魚の水槽にあぶくを送るポンプを大規模にしただけのものです。ホームセンターやネットで、規格の合うものを購入して、電源とゴムパイプをつなぎ換えるだけです。
交換頻度は一般的には10年くらいはもちます。止まったり動いたりなど動きがおかしくなったり、満タンでないのに匂いが出始めたら交換サインだと考えられます。
モーターが停まったまま数日が経過するとバクテリアが死んで、匂いが出始めますので要注意です。更にそのままにすると、浄化能力がなくなり、側溝に汚水たれ流しということになります。
浄化槽の維持を自分で行い、部品交換などをするほかに、浄化槽の維持費を安くするためには汲み取り回数を減らすことです。もちろん溜めておくのではなく、満タンにするのを遅らせるのです。
賛否ありますが、トイレットペーパーを節約するか、ウォシュレット頼りで紙を別に処分するか、 トイレに流さない!という方法で、汲み取りのインターバルを飛躍的に長くしている人もいます。
ちなみにティッシュペーパーは水に溶けないため、トイレに流してもいいように出来ていません。ティッシュなどが原因で配管を詰まらせてしまうと、治すために数万円~十万円単位の出費となりますので普段から心がけておきましょう。
また、細かい話ですが水張りの際の水道代を節約するために、井戸水や川水ポンプを使用する人もいます。
なお、作業中の業者さんに聞いた話で、よくカースペースに浄化槽のマンホールが設けてあるのですが、この上を車が踏むと、浄化槽の変形などを招いて寿命が短くなったり、とても悪いそうです。(浄化槽の素材は強化プラスチックなどです)
上から鉄板を引いて力を分散したり、タイヤで踏まないようにするなどの工夫が必要です。
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5.浄化槽汲み取りは何の経費?【勘定科目】
し尿処理代は、勘定科目の 「雑費」「福利厚生費」「支払手数料」「衛生管理費」で処理できます。この科目で出さなければならないという厳密な決まりはないようです。
どのみちですが、個人の不動産確定申告で国税庁の様式は、修繕費か雑費に入れて書いていいようになっていますね。(自分で科目名を入れることも可能)
6.「浄化槽 汲み取り」のまとめ
以上、「浄化槽 汲み取り」というテーマで解説をしました。下水処理の概要・浄化槽の維持のしかたなど、理解をいただけたでしょうか?
「家にいる」時間が増えた人が多数いる昨今、汲み取りコストも増すはずですね。上手に付き合う必要性が高まっています。
普段あまり直視しない、住まいの維持管理に目が向くきっかけにもなると思いますので、本下水でない場合は、自宅や自分の管理の設備がどうなっていて維持にいくらかかっているか、把握するのがいいと思います。
- 汚水処理で下水道使用は7割弱。浄化槽や汲み取り式を使うところも多い。
- 浄化槽も定期的に汲み取りが必要。放置すると処罰やお金がかかる。
- 汲み取りは専門業者に依頼。浄化槽の維持管理は自分でできることも。