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不動産投資の税金と節税対策

アパート経営を法人化をする5つのメリットと3つのデメリット

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こんにちは!「イエベスト」の管理人、松崎 サブローです!

今回はアパート経営の法人化についてお話しします

アパート経営をしている人で、「法人化すると節税になるよ」という話を聞いたことがある方もいるかもしれません。確かに、アパート経営で賃料収入が一定以上に達した場合、法人化することで節税をすることができます。

ただ、「アパート経営を法人化する」といっても今ひとつどういうことか分からない方や、どうやって法人化すれば良いのかよくわからない方も、実際には少なくないと思います。

そこでこの記事では、アパート経営の法人化に興味がある方に向けて、法人化の方法やメリットとデメリット、どのタイミングで法人化すべきかなどについて解説していきます。

これを読めば、ご自身のアパート経営を法人化すべきか判断する時や、実際に法人化の手続きをする時の役に立つこと間違いなしです。

1.アパート経営の「法人化」とは

アパート経営 法人化 とは

アパート経営を「法人化」するといっても、あまりピンと来ない方も少なくないでしょう。

そこでまず、アパート経営を「法人化」するとはどういうことなのか、確認していきましょう。

アパート経営を「法人化」するとは、個人で保有している不動産を法人名義で保有したり管理したりすることで、税金などの優遇措置を受けることをいいます。

以下、より具体的にみていきましょう。

アパート経営を「法人化」するといった場合、大きく以下2つの方法があります。

(1)自社保有方式
(2)管理委託方式

以下、それぞれについて解説していきます。

1-1.自社保有方式

1つは、自社保有方式です。不動産所有法人を設立し、不動産の所有者を「個人(あなた)」ではなく「法人」にするという方法です。

不動産の所有者を「会社」にするには、以下2つの方法があります。

①(あなた)個人所有の建物を、会社に売却する
②初めから会社の名義で建物を建てる

なお、「土地」は(あなた)個人が所有し、「建物」は会社が所有する、というのが一般的です。

自社保有方式のイメージは以下の図のようになります。

この場合、建物を賃貸することで得られる賃料収入は、100%建物所有法人に入ります。

1-2.管理委託方式

2つめは、管理委託方式です。資産管理法人を設立し、個人(あなた)が所有する不動産の管理を資産管理法人に委託管理させる方法です。

管理委託方式のイメージは、以下の図のようになります。

この場合、建物を賃貸した場合の賃料収入は個人(あなた)に入ります。その内の何%かを、管理料として資産管理法人に支払うのです。

1-4.どの方法で法人化するのが良い?

アパート経営の法人化で一般的な2つの方法の中でも一般的なのは自社保有方式です。

よって、ここから先は自社保有方式を前提に話をすすめていきます。

2.アパート経営の課税所得が900万円を超えたら法人化すべき

アパート経営の課税所得が900万円を超えたら法人化すべき

この記事をお読みの方は、アパート経営を法人化することを検討中の方が多いと思います。

結論からいうと、アパート経営を専業でやる場合、不動産所得が900万円を超えたら、法人化をするべきといえるでしょう。理由は、税金が安くなるからです。

以下、詳しく検討していきます。

個人でアパート経営を行った場合、賃料収入に対して所得税が課せられます。この所得税と住民税がどれくらいかかるかは、以下の表の通りです。

課税される所得金額税率(所得税+住民税)
195万円以下15.0%
195万円を超え
330万円以下
20.0%
330万円を超え
695万円以下
30.0%
695万円を超え
900万円以下
33.0%
900万円を超え
1,800万円以下
43.0%
1,800万円を超え
4,000万円以下
50.0%
4,000万円超55.0%

出典:国税庁 No.2260 所得税の税率

一方、アパート経営を法人化した場合、賃料収入に法人税が課せられます。

この法人税の税率(中小法人や一般社団法人としてみた場合の税率になります)は以下の通りです。

課税される所得金額平成28年4月1日以後
開始事業年度
平成30年4月1日以後
開始事業年度
年800万円以下の部分19%19%
年800万円超の部分23.4%23.2%

出典:国税庁 平成28年度 法人税関係法令の改正の概要

法人税のほかに法人住民税・事業税など諸々の税金を考慮しても、法人にかかる税金の税率は最高で35%前後です。

一方、個人でアパート経営をした場合、課税所得が900万円を超えると税率が43.0%になります。

ということは、不動産投資の収入が年間900万円を超えた場合、資産管理法人を設立した方が、税率が低くてお得ということになります。

〇サラリーマンと兼業でアパート経営をする場合なお、以上の内容はアパート経営を専業でやっている場合の話です。もしサラリーマンをしながらアパート経営もするという場合、「課税所得がいくらになるか」を現在の給与所得に照らして計算する必要があります。「給与所得と賃料収入の合計が900万円を超えるくらい」を目安に法人化すると良いでしょう。

3.アパート経営を法人化するメリット

アパート経営を法人化するメリット

アパート経営を法人化する大きなメリットは、上記で紹介した税率が低くなるという点です。

その他にも、アパート経営の法人化には以下のようなメリットがあります。

3-1.「必要経費」で節税しやすくなる

アパート経営を法人化するメリットとして、「必要経費」で節税しやすくなるということがあげられます。

というのも、法人の方が確定申告で「必要経費」や「損金」として計上できるものが多いからです。

その違いは、例えば自分の親族などを法人の社員や役員にした場合、その人らに支払う給料や退職金といった面などに現れます。

具体的には法人と個人では以下のような違いが生じます。

法人個人
旅費交通費確定申告上日当等も「損金」に算入できる
※旅費規程等が必要
実費のみ経費として計上できる
自分の給料確定申告上「役員報酬」として損金に算入できる認められない
同一生計親族への給料確定申告上「役員報酬」として損金に算入できる確定申告上「専従者給与」として経費に計上できる
自分の退職金確定申告上「役員退職金」として損金に算入できる認められない
同一生計親族への退職金確定申告上「役員退職金」として損金に算入できる認められない
自分の生命保険確定申告上「支払保険料」として全額損金に算入できる生命保険料控除額を上限として損金に算入できる
同一生計親族への生命保険確定申告上「支払保険料」として全額損金に算入できる
※原則的に掛捨て部分のみ
生命保険料控除額を上限として損金に算入できる
福利厚生費役員を含めて全額損金に算入できる従業員分のみ経費に計上できる
地代家賃法人と個人の間で損金に算入できる同一生計親族間で経費に計上できない
交際費年800万円まで全額損金に算入できる
※中小法人等に限る
全額経費に計上できる

以上のように、法人化することで節税手段の範囲が広がるため、上手く利用すれば大きな節税につなげることができます。

なお、節税の仕組みについてよく分からないという方は、不動産投資による節税はどういう仕組み!?徹底解説します!を参考にしてみてください。

〇計画的な節税も可能個人の確定申告は一律12月が決算日と決められています。一方、法人は決算日を任意で設定できます。よって、資産管理法人を設立した方が、「節税を計画的に進めることができる」というメリットもあります。

3-2.融資が受けやすくなる

アパート経営を法人化するメリットとして、金融機関からの融資を受けやすくなりますという点があげられます。

具体的には、ローンの審査に通りやすくなったり、融資上限額が大きくなったり、低金利の融資が受けられるようになったりします。

なぜなら、一般的に個人より法人の方が信用力という面で高く評価されるからです。

また、個人とは違って法人には原則として寿命がないので、金融機関が死亡を想定しなくて済むという面でも融資上有利になります。

3-3.赤字の繰越損失の期間を長くできる

アパート経営を法人化するメリットとして、赤字の繰越損失の期間を長くできるということがあげられます。これを、「青色欠損金の繰越控除制度」といいます。

法人の場合、不動産投資で赤字決算となった場合、翌事業年度から9年間に渡って繰り越しをすることができます。ある年で出た赤自分を、翌年以降の所得や利益と相殺することができます。

一方の個人の場合、不動産投資が「事業規模」とみなされた場合は3年間の繰り越しが認められますが、基本的には繰り越しは認められません。

繰り越しをした分だけ翌年の節税につながります。

3-4.相続税対策ができる

アパート経営を法人化するメリットとして、相続税対策ができるという点があげられます。

相続税がいくらかかるかは、以下の計算で求められます。

相続税額=(すべての財産額-基礎控除額)×相続税率

アパート経営を法人化して、アパート建物を法人に移転することで、建物を上記計算の「すべての財産額」から除外することができます。こうすることで、相続税額を減らすことができるのです。

この点について、詳しくは【保存版】相続税対策として不動産を利用する全方法の「2‐1.賃貸事業を法人化する」をご参照ください。

3-5.減価償却の調整が可能

アパート経営を法人化するメリットとして、減価償却の調整が可能であるという点があげられます。

「減価償却」とは、「建物が年々劣化していくだろう」という建前で、実際の支出とは関係なく不動産投資の必要経費として計算する仕組みです。イメージとしては、以下の図のようなものです。

定額法による減価償却費のイメージ

減価償却について知りたい場合、不動産投資の必須知識!マンション減価償却費の計算方法と利用方法をあわせて参考にしてみてください。

個人の場合、減価償却をいくら必要経費として計上するかは、すでに決められた計算式によって算出します。一方、法人の場合、償却限度額の範囲内であれば、自由に調整することができます。

4.アパート経営を法人化するデメリット

アパート経営を法人化するデメリット

これまで紹介したように、税金を大きく下げることができる法人化ですが、そこにはデメリットも存在します。デメリットもしっかり把握した上で、法人化するかどうかを決めましょう。

アパート経営の法人化によるデメリットは、以下のようなものです。

4-1.設立に費用・手間がかかる

アパート経営を法人化するデメリットとして、設立に費用・手間がかかるという点があげられます。

設立にかかる費用としては、事業ローンを受けた場合は融資手数料や租税公課(登録免許税、不動産取得税)、手続きを司法書士に依頼した場合は司法書士報酬などがかかります。

また、法人設立時に、会社設立の届出だけでなく個人で行っていたアパート経営の廃業届も必要となり、手間がかかります。

4-2.法人の維持に費用・手間がかかる

アパート経営を法人化するデメリットとして、設立した法人の維持に費用・手間がかかるという点があげられます。

具体的には、維持費として租税公課(地方税の均等割)、社会保険料の事業主負担(役員報酬を支払う場合にかかります)、経理事務の負担(税理士や会計士への報酬など)が継続してかかることになります。

また、複式簿記での記帳や法人税等の申告など、法人を維持するための事務の手間も増えます。

4-3.長期譲渡所得の優遇税制は利用できない

アパート経営を法人化するデメリットとして、長期譲渡所得の優遇制度は利用できなくなるということがあげられます。

個人の場合、所有する不動産を譲渡したときの売却益にかかる税金の税率は、保有期間が5年以内で売却した場合は39%ですが、保有期間が5年を超えて売却した場合は20%となります。これが長期譲渡所得の優遇制度です。

一方、法人の場合、保有期間に関係なく法人税率がかかります。

よって、保有期間が5年を超える物件を売却する場合の税金という観点では、個人の方が法人より有利になります。

5.アパート経営を法人化する手順

アパート経営を法人化する手順

実際にアパート経営を法人化するとなった時、どのような手順で法人化をすればいいのか気になりますよね。

アパート経営の法人化は、以下の手順で進めます。

5-1.法人の種類を決定する

まず、法人の種類を決定します。

法人の種類には、大きく分けて「株式会社」「合同会社」「合名会社」「合資会社」「一般社団法人」の5つがあります。

  • 株式会社
  • 合同会社
  • 合名会社
  • 合資会社
  • 一般社団法人

後ほど詳しく説明しますが、中でも一番おすすめなのは合同会社です。よって以下、合同会社の設立を前提に話を進めていきます。

5-2.定款を作成

続いて、定款を作成します。「定款」というのは、会社の基本的なルール(規則)を紙や電子媒体に記録したものです。

合同会社の定款のサンプルが以下のサイトからダウンロードできますので、参考にしてみてください。
電子定款作成代行センター

5-3.登記書類を作成

続いて、登録書類を作成します。合同会社を設立する場合、登記書類として以下の6つを作成する必要があります。

①合同会社設立登記申請書
②登記用紙と同一の用紙
③定款2部(会社保存用、法務局提出用)
④代表社員の印鑑証明書
印鑑届出書
⑥振込証明書(銀行で発行してくれます)

以上の書類を用意したら、法務局に提出します。

5-4.設立登記

続いて、法務局で設立登記を行います。

5-5.開業の届け出

続いて、税務署および都道府県で開業の届出を行います。開業の届け出に必要な書類は、以下の4つになります。

法人設立届出書
参考:[手続名]内国普通法人等の設立の届出|法人税|国税庁
青色申告の承認申請書
参考:[手続名]青色申告書の承認の申請|法人税|国税庁
給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書
参考:[手続名]給与支払事務所等の開設・移転・廃止の届出|法人税|国税庁
源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書
参考:[手続名]源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請|法人税|国税庁

6.アパート経営法人化の注意点

アパート経営 法人化 注意点

最後に、アパート経営を法人化するにあたって気をつけるべきことについてまとめます。

6-1.事前に確認しておくこと

アパート経営を法人化する場合、以下2つの事項は事前に確認しておきましょう。

6-1-1.就業規則で副業が禁止されていないか

自分の勤務先の就業規則に副業の禁止条項がないか確認しましょう。

不動産投資を行うこと自体は副業禁止に抵触しない場合がほとんどです。ただ、法人を設立して不動産投資を行う場合、それは「事業」となります。

すると、副業として認定されてしまう場合があるのです。禁止条項に触れると、規定によっては懲戒処分や解雇されてしまう場合もあり得ます。よく確認しておきましょう。

6-1-2.費用対効果がどれくらいか

法人を設立することの費用対効果がどれくらいか確認しておきましょう。

具体的には、①資産管理法人設立時・設立後にかかる費用に対してリターンがどれだけ見込めるか、②資産管理法人の設立が相続税対策や節税効果にどの程度有利に働くかを、しっかりシミュレーションすることで把握しましょう。

6-2.設立・運営コスト

資産管理法人の設立・運営コストについても確認しておきましょう。

設立時にかかるコストと運営にかかるコストはそれぞれ以下のようになります。

項目金額
設立時にかかるコスト
登録免許税○株式会社…資本金の額の1,000分の7
(15万円に満たない場合は申請件数1件につき15万円)○合同会社…資本金の額の1,000分の7
(6万円に満たない場合は申請件数1件につき6万円)○一般社団法人…6万円
参考:No.7191 登録免許税の税額表|印紙税その他国税|国税庁
司法書士報酬相場は約7万円です
資本金(出資金)1円から可能ですが、通常は30~100万円くらいです
その他の費用1~2万円くらい見込んでおきましょう
運営時にかかるコスト
法人税黒字の場合は利益の約40%です
赤字の場合は法人住民税のみがかかります(都道府県により税額が異なるので確認しておきましょう)
税理士報酬相場は年10~15万円です

6-3.会社形態

資産管理法人に向いている会社形態としては、株式会社、合同会社、一般社団法人の3つがあります。ポイントは以下の通りです。

3-3-1.最少人数が少ない

上記3つは、株式会社が1人、合同会社が1人、一般社団法人が2人と、それぞれ設立に必要な最少人数が少ないです。

不動産投資を事業として行うにあたっての意思決定に関与する人数は少ないほうが良いので、設立に必要な最少人数は少ないほうが良いのです。

3-3-2.法人格がある

上記3つは、すべて法人格が認められます。

法人格が認められると、役員報酬などを利用した節税が可能になります。

3-3-3.手間と費用が少ない

上記の3つは、他の形態と比べて設立にかかる手間と費用が少ないです。

合同会社の注意点上記3つの中でも、1番おすすめなのは合同会社です。

ただ、合同会社として設立するにあたっての注意点としては、相続トラブルを防ぐために以下の2点に注意しましょう。

まず、事前に不動産を誰に相続するか決めておくことです。これをしなければ、ご自身の持分をご家族に引き継ぐことができません。

次に、相続人(予定)が数人いる場合は、全員を法人の社員にする必要があります。これをしておかないと、相続する際に特定の相続人だけが代表して相続する手続きが必要となってしまい、トラブルの元となります。

7.アパート経営の法人化のまとめ

アパート経営の法人化について書いてきましたが、いかがでしたか。

この記事が、アパート経営をする全ての方の参考になれば幸いです。

  • この記事を書いた人
松崎サブロー

松崎サブロー

イエベストの編集長です。宅地建物取引士。不動産会社では不動産投資、不動産売却、不動産賃貸、不動産管理など幅広く担当。 不動産に関わる難しい知識を初心者にもわかりやすい正しい情報として提供することを心がけています。

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