こんにちは!「イエベスト」の管理人、松崎 サブローです!
土地の取引にかかる消費税についてきちんと理解していますか?
私たちが普段モノを取引するとき、その価格には消費税が課せられますよね。そのため、何かを取引する際には、消費税がかかるのが当たり前だと思って生活しているはずです。
しかし、土地を取引する場合は、原則としてその取引価格に消費税はかかりません。
土地は「消費税」の性質に合わないからです。ただし、例外的に消費税が課されてしまう取引もあります。
一方、建物については原則として消費税がかかります。ただ、例外的に消費税がかからない場合もあります。
このように、不動産取引にかかる消費税は複雑な構造をしています。「土地+建物」のセットで取引する場合も、どこに消費税がかかるかというのは少しややこしい問題です。
これから不動産の取引をするという場合、取引にかかる消費税については、一度整理しておいた方が良いでしょう。
そこでこの記事では、不動産の取引に関して消費税がどのように課税されていくのか解説します。
目次
1.土地の取引に消費税はかからない!
私たちが普段何かモノを買ったりサービスの提供を受けたりするとき、そのモノやサービスの価格に加えて消費税を支払っています。消費税は、モノやサービスの取引に対して課される税金なのです。
ところが、土地を取引(売買や賃貸)する場合、消費税は課税されません。このことについて、以下詳しく解説していきます。
1-1.原則として土地の取引で消費税は非課税
土地の取引(売買や賃貸)には消費税が課されないことについては、国税庁HP「No.6201 非課税となる取引」にもきっちり記載されています。
1 概要
消費税は、国内において事業者が事業として対価を得て行う取引を課税の対象としています。
しかし、これらの取引であっても消費に負担を求める税としての性格から課税の対象としてなじまないものや社会政策的配慮から、課税しない非課税取引が定められています。2 主な非課税取引
(1) 土地の譲渡及び貸付け
土地には、借地権などの土地の上に存する権利を含みます。
ただし、1か月未満の土地の貸付け及び駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は、非課税取引には当たりません。(以下省略)
以上のように、消費税の「非課税取引」として「土地の譲渡及び貸付け」が挙げられているのです。つまり、土地を売買する際の売買価格や、土地を賃貸する際の賃料に対して、消費税は課税されないということです。
理由としては、土地は「消費」されるものではなく、消費税の課税にはなじまないので課税されません。土地の取引は「消費」ではなく「資本移転」の一種として捉えられます。
〇「土地の上に存する権利」とは?引用箇所の中で、「土地の上に存する権利」という文言が気になった方がいるかもしれません。
「土地の上に存する権利」とは、「地上権、土地の賃借権、地役権、永小作権などの土地の使用収益に関する権利」(国税庁HP)のことを指します。土地に関するこれらの権利を取引する場合についても、消費税は課税されません。参考:国税庁HP「No.6225 地代、家賃や権利金、敷金など」
1-2.例外的に土地の取引に消費税が課税される場合
ただ、土地の取引でも例外的に消費税が課税される場合があります。それは、以下のような場合です。
①1か月未満の土地の貸付け
②駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合
先ほどの引用箇所で気づいた方もいるかもしれませんが、以上の場合については土地の取引でも消費税が課税されます。
つまり、土地を一時的に貸し付ける場合の利用料や、駐車場などの施設として貸し付ける場合の使用料については、例外的に消費税が課税されます。
建物や駐車場など施設の利用に付随して土地が使用される場合は消費税の課税の対象になります。
したがって、駐車している車両の管理を行っている場合や、駐車場としての地面の整備又はフェンス、区画、建物の設置などをして駐車場として利用させる場合には、消費税の課税の対象となります。
このほか、野球場、プール又はテニスコートなどの施設の利用に伴って土地が使用される場合も消費税の課税の対象となります。
2.建物の取引でも消費税がかからない場合がある!
ここまで、土地の取引に消費税は課税されないということを書いてきました。一方、建物の取引については、原則として消費税がかかります。
ただ、例外的に建物の取引でも消費税が課税されない場合があるのです。このことについて、以下詳しく解説していきます。
2-1.消費税の課税条件
まず、消費税が課税される取引の条件について確認しましょう。
②事業者が事業として行うものであること
(反復、継続かつ独立して行われる取引であること)
③対価を得て行われるものであること
④資産の譲渡、貸付及びサービスの提供であること参考;国税庁HP「No.6105 課税の対象」
2-2.建物取引で消費税非課税となる場合
上記の条件のうち、「②事業者が事業として行うものであること」に注目します。
この条件を逆に考えれば、「事業者が事業として行うもの」に該当しない取引であれば課税されないことになります。
具体的には、以下の条件をすべて満たした場合、建物の取引でも消費税は課税されません。
②居住用の住宅(マイホーム)を売却すること
①について
1つめの条件は、個人で建物を売却することです。
売主が「不動産業者」である場合、「事業者」と認定されてしまいます。ただ、個人が1回きりの売却をする場合であれば「事業者」とは認定されず、消費税は課税されません。
②について
2つめの条件は、居住用の住宅(マイホーム)を売却することです。
売却する物件が「投資用の住宅」である場合、「事業」として認定される場合があります。ただ、売却する物件が居住用の住宅(マイホーム)である場合、「事業」とは認定されず、消費税は課税されません。
3.「土地+建物」で取引を行った場合の消費税
ここまで、土地の取引には消費税がかからず、建物の取引には(一部例外はあるものの)消費税がかかるという話をしてきました。
ここまでをまとめると、以下の表のようになります。
<土地の取引> | <建物の取引> |
原則:消費税かからない | 原則:消費税かかる |
例外:①または②の場合は消費税かかる ①1か月未満の土地の貸付け ②駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合 | 例外:①かつ②の場合は消費税かからない ①個人で売却すること ②居住用の住宅(マイホーム)を売却すること |
では、「土地+建物」で取引を行った場合、消費税はどうなるのでしょうか。
3-1.建物の金額に対してのみ消費税が課税される
「土地+建物」で取引を行った場合、「建物」の部分にのみ消費税が課税されます。つまり、「土地+建物」で1億8,000万円(うち、土地が1億円、建物が8,000万円)だった場合、建物の8,000万円分にのみ消費税がかかるのです。
ところで、「土地+建物」をいくらで取引するかということに関し、特にルールはありません。売主と買主の間の交渉の中で決まっていくのです。よって、「土地+建物」の価格の中で土地がいくら、建物がいくら、ということも、当事者の合意の中で決まっていきます。
ただ、そこで売主と買主の間で衝突が生じます。売主は消費税を預かる立場ですので(後日税務署に支払います)、なるべく建物の価格比率を下げて消費税を下げたいと考えます。一方、買主は消費税を支払う立場ですので(後日、消費税を控除できます)、なるべく建物の価格比率を上げて消費税を上げたいと考えます。
これだと、両者の間に力関係が働いた場合、土地と建物の価格比率に関して不当な按分がなされてしまう恐れがあります。
そこで、「土地+建物」の取引の中で、土地と建物それぞれの価格をどう按分するかという点について、3通りの方法が提示されています。
3-2.按分方法(分配方法)は3通り
「土地+建物」で取引をした場合に両者の金額の按分(分配方法)をどうするかという点について、国税庁のHPでは以下の3通りの方法が挙げられています。
土地とその土地の上に存する建物を一括して譲渡した場合には、土地の譲渡は非課税ですので、建物部分についてのみ課税されます。
この場合、譲渡代金を1 譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分
2 相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分
3 土地、建物の原価(取得費、造成費、一般管理費・販売費、支払利子等を含みます。)を基にした按分
などの方法により土地と建物部分に合理的に区分する必要があります。
以下、それぞれ解説していきます。
3-2-1.譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分(分配方法)
1つは、譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分(分配方法)です。
「時価」とは、実際の不動産市場取引の中で形成される価格のことです。不動産の取引価格は、売主と買主の交渉の中で、それぞれ個別に決まります。いくらで売買しなければいけない、ということは決まっていないのです。
ただ、取引事例をいくつか集めてみると、似たような不動産(エリア、面積など)はある一定の価格帯で取引されていることがわかります。それが、時価です。
土地と建物それぞれの時価の調べ方は、以下を参考にしてください。
3-2-2.相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分(分配方法)
2つめは、相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分(分配方法)です。
「相続税評価額」と「固定資産税評価額」は、どちらも税金の課税額を算出するための基準となるものです。
「相続税評価額」とは、相続税の算出基準とするために求められる評価額のことです。「固定資産税評価額」とは、固定資産税の算出基準とするために求められる評価額のことです。
これらの評価額を基に、土地と建物の価格を按分する方法もあります。
それぞれの評価額の調べ方は、以下を参考にしてください。
〇相続税評価額:【保存版】土地評価額(土地価格)を調べる全ての方法
(※建物については、固定資産税評価額が相続税評価額となります)
〇固定資産税評価額:固定資産税評価額の計算方法|土地は?建物は?
3-2-3.土地、建物の原価を基にした按分(分配方法)
3つめは、土地、建物の原価を基にした按分(分配方法)です。
「原価」とは、不動産を取得した時にかかった費用のことです。不動産の取得費や、新築で建物を建てた場合はその造成費、一般管理費や販売費、ローンを利用した場合はその支払利子を含めた金額です。
こうした土地・建物それぞれの原価を基に価格を按分する方法もあります。
土地・建物それぞれの原価については、不動産購入時の契約書やぞれぞれの費用の領収書を参考に調べます。
4.土地の消費税のまとめ
今回は土地の取引に消費税が課税されないということについて書いてきましたがいかがでしたか。
今回の話を表にまとめると、以下のようになります。
<土地の取引> | 原則:消費税かからない |
例外:①または②の場合は消費税かかる ①1か月未満の土地の貸付け ②駐車場などの施設の利用に伴って土地が使用される場合 | |
<建物の取引> | 原則:消費税かかる |
例外:例外:①かつ②の場合は消費税かからない ①個人で売却すること ②居住用の住宅(マイホーム)を売却すること | |
<「土地+建物」の取引> | 以下の方法で按分し、「建物」の部分にのみ消費税かかる(上記「例外」に該当する建物の場合は消費税課税なし) ①譲渡時における土地及び建物のそれぞれの時価の比率による按分 ②相続税評価額や固定資産税評価額を基にした按分 ③土地、建物の原価を基にした按分 |
また、実際に不動産取引をする場合、どのような費用に消費税が課税され、どのような費用に消費税が課税されないのかをまとめました。
課税されるもの | 課税されないもの |
・建物の売買価格 (個人がマイホームを売る場合を除く) ・不動産仲介手数料 ・金融機関への一括繰り上げ返済手数料 ・司法書士報酬 (登記などを依頼する場合) ・事務所・店舗などの家賃 | ・土地の売買価格 ・土地の地代 ・居住用物件の家賃 ・住宅ローンの返済利息や保証料 ・火災保険・生命保険 ・保証金・敷金 |
この記事が、土地の取引を行うすべての方の参考になれば幸いです。