不動産投資の利回りを確認して物件を購入しようと思ったけど、利回りの計算方法や、その物件の利回りが適正か分からずお困りの人もいるでしょう。
利回りは主に3種類あるため、同じ物件でも利回りの種類によって、パーセンテージが変わります。
不動産投資家の中には、誤った利回りの割合を見て購入し、痛い目に遭う人も…。
しかし、それぞれの利回りの計算方法を知れば、正しい利回りを参考にして、物件を購入できます。
この記事では、利回りの概要や種類を紹介しながら、最低ラインについても解説します。
利回りの計算方法や見方が分かるようになるため、参考にしてみてください。
この記事を読むと分かること
- 利回りの概要・種類
- 地域ごとの利回り状況
- 高利回りでも買わない方が良い物件の特徴
目次
1.利回りとは不動産投資の利益額を計算する時に使うもの
利回りとは、不動産投資で得られるであろう家賃収入を、計算する時に活用する指標です。
たとえば、年間の利回りが物件価格(1000万円)の5%だった時は、1000万円×5%です。つまり、年間の利回りは50万円です。
なお、利回りは物件や地域によって異なり、2,3%程度のケースもあれば10%を超える場合もあります。
ポイント
物件を購入して、いくらの家賃収入が見込まれるか推測するために役立つ指標!
2.不動産投資の利回りは3種類ある
不動産投資で利用する利回りには、3パターンあります。
ここでは、3種類の利回りの意味と計算方法を見てみましょう。
2-1.想定利回り
想定利回りとは、物件が満室になった時に得られるであろう家賃収入を物件価格で割ったものです。例を見てみましょう。
例.一部屋の賃料が各3万円で全6室のマンション。販売価格が2,160万円だった場合。
3万円×6室×12カ月=216万円(1年間満室になった場合の家賃収入)
216万円÷2,160万円=10%(利回り)
一番良い状態での利回りを知りたい時に、活用できます。
2-2.表面利回り
表面利回りとは、現段階での年間の家賃収入を物件価格で割ったものです。こちらも、例を見てみましょう。
例.一部屋の賃料が各3万円で全6室のマンションで、そのうち3室のみ入居している。販売価格は2,160万円。
3万円×3室×12カ月=108万円(現段階での年間家賃収入)
108万円÷2,160万円=5%(利回り)
現状の空室状況に合わせて、利回りを計算したい人に便利です。
2-3.実質(NOI)利回り
最後の実質(NOI)利回りは、現段階での年間の家賃収入から年間の支出を引いた値を、販売価格で割ったものです。
年間の支出には、マンション組合費や管理費、固定資産税や不動産会社への支払金などが含まれます。
こちらの計算方法は、下記の通りです。
例.一部屋の賃料が各3万円で全6室のマンションで、そのうち3室のみ入居。年間の支出額は54万円で、販売価格は2,160万円。
3万円×3室×12カ月=108万円(現段階での年間家賃収入)
(108万円-54万円)÷2,160万円=2.5%(利回り)
3種類とも、販売価格・一部屋当たりの賃料を同一にしましたが、実質利回りが3つの中で一番低くなりました。
実質利回りは、年間の支出を加味して計算するため、必然的に利回りが低くなるのです。
なお物件の中には、高利回りを謳っていながらも、手元に入ってくる収入が少ない場合もあります。
物件購入者を騙している不動産業者も存在しますので、ご注意ください。
注意
同じ物件でも、利回りの種類が違うだけで数倍もの差が出ることもあるよ!
3.不動産投資の表面利回り平均を地域ごとで見てみよう
表面利回りの平均は、地域ごとで異なります。日本不動産研究所が発表した「第40回不動産投資家調査」では、ワンルームタイプの賃貸住宅一棟の期待利回りが、東京都の城南地区で4.3%、城東地区は4.5%となっています。
しかし東京以外の政令指定都市(9カ所)では、城南・城東地区よりも平均利回りは高いです。
- 札幌5.5%
- 仙台5.5%
- 横浜5.0%
- 名古屋5.1%
- 京都5.2%
- 大阪4.9%
- 神戸5.2%
- 広島5.8%
- 福岡5.2%
つまり、表面利回りの面だけで言うと、東京以外の政令指定都市(上記9カ所)で物件を購入した方が、高い利回りの物件を見つけやすいということです。
注意
東京都心部は人口は多いものの、高い利回り率の物件を購入して稼ぐのは難しいよ!
4.不動産投資の表面利回りや実質利回りの最低ラインは、一概に決めつけない方が良い
不動産投資の表面利回りや実質利回りの最低ラインは、一概に決めない方が良いです。
なぜなら、最低ラインを決めたところで儲かるとは限らないからです。
確かに収益化や維持費のことを考えると、4,5%の利回りが欲しいとなるかもしれません。
しかし、利回りの最低ラインにばかり目がいき、物件を購入した結果、悲惨な状況に巻き込まれる恐れもあります。
また、最低ラインを設けて購入した人の中には、自分の失敗を認めたくないという理由で「損失が膨れているのに物件を売却できない」「別の物件に買い替える勇気が出ない」など、不動産投資で悪影響を受ける恐れがあるため危険です。
よって、利回りの最低ラインを設けるのではなく、家賃収入が入る物件か考えながら、物件選びをしましょう。
注意
利回りが高くても入居者がいなければ家賃収入はゼロ!
5.不動産投資用の物件を選ぶ時は利回りのシミュレーションをしよう
利回りのみを基準にして物件を買わない方が良いとお伝えしました。しかし、そうは言っても利回りのシミュレーションはした方が良いです。
なぜなら、利回りを疎かにしたことで利益を確保できない恐れがあるからです。物件を保有していると、ある程度の費用はかかります。
費用を超える収益を手に入れるためにも、利回りを把握することは大事なのです。
ちなみに、シミュレーションは不動産業者に依頼するとやってもらえます。さらにインターネット上でも、シミュレーションツールがあるため、活用可能です。
利回りをシミュレーションする時は、ランニングコストを考慮して「実質利回り」の割合を参考にしましょう。
なお、こちらの記事には、アパート経営の利回りについて載っています。
関連記事>>アパート経営の利回りの真実とは?正確な相場を把握できてますか?
6.利回りが高い物件を買っても不動産投資に成功するとは限らない
前述でも、物件の利回りが高くても儲からないと話しました。
高利回りの物件を買って失敗した投資家は何人もいます。ここでは、5人の失敗事例を紹介します。
6-1.入居者が全く集まらなかったAさん
Aさんは最寄り駅まで徒歩10分の場所に建つ、実質利回り率8%の物件を丸々一棟購入しました。
交通アクセスも便利だったため、すぐに入居者が集まるだろうと思っていましたが、フタを開けてみると入居者は0。
その理由は競合の存在でした。Aさんが購入した物件の周りには、築年数が浅い物件がたくさん建っていました。しかも、競合は宣伝をしているのにAさんの物件は全く宣伝をしていませんでした。
結果、Aさんの物件は大赤字を抱えて売却。現在は別のオーナーが運営しています。
6-2.固定資産税が高額で途中で売却してしまったBさん
Bさんは、郊外にファミリー層向けのマンションを買いました。入居者も多く費用が安いこともあり、順調に収益が積みあがりました。しかし、ある時保有している物件の地価が数十パーセント上昇することに…。
一般的には喜ばしいと考えるかもしれませんが、Bさんにとっては死活問題でした。なぜなら、固定資産税が1.5倍になったからです。
その後も固定資産税は上がり続けましたが、家賃収入が増えることはありませんでした。結果、資金が持たなくなり、不動産価格が大暴落したタイミングで、売却せざるを得なくなったのです。
6-3.超高額の修繕費が発生したCさん
Cさんは、とにかく安い物件を買いたくて、一部屋5,000万円の部屋を購入しました。徒歩5分の場所には、地下鉄の駅もあったため利便性は良かったですが、買ってから3年後に待っていたのが高額の修繕費。
築40年超えということもあり、1回の修繕費で500万円かかったそうです。しかし、修繕したものの家賃収入は全く増えませんでした。結果、不動産投資でマイナスを出してしまったのです。
6-4.違法建築だったことが判明し収入が途絶えたDさん
Dさんは築年数が浅いアパートを一棟購入しました。利回り率も高く、家賃収入を着々と得ていました。しかし、ある時違法建築だったことが判明します。結果、入居者は0になりました。
その後、違法箇所を改善したものの、その物件には悪い評判が付いたため、入居者を獲得できない状況に…。結果、不動産投資は失敗に終わりました。
6-5.オーバーローンで物件を購入し生活苦になったEさん
Eさんは預金がなかったため、自身の収入に見合わない金額のローンを組んで物件を購入しました。Eさんは多額の費用が発生することを想定せずに購入したため、すぐに資金がパンク。その後、ローンの返済ができずに物件を売却しました。
しかし、売却後も多額の借金が残ったため弁護士事務所に相談します。最終的には債務整理と呼ばれる方法をとって、借金の減額申請。現在も、返済に追われているそうです。
ポイント
資金管理や集客ができなくなると、失敗の確率は上がるよ!
7.こんな特徴がある高利回り物件は、不動産投資で購入しない方が良い
高利回り物件の中には、不動産投資に向いていないタイプも多く存在します。ここでは、購入しない方が良い物件を3パターン見てみましょう。
7-1.相場と比べて極端に利回りが高い
相場と比べて極端に利回りが高い場合、物件自体に何かしらの理由があるかもしれないので要注意です。購入者・入居者がいないため、高利回りになっている場合があります。
人気が無かったり、事故物件だったりなど、収益が生まれない物件の可能性があるため気を付けましょう。
このような物件をどうしても購入したい時は、その物件に関する調査(例.事件がなかったか、建物に悪い評判が無いか)をしてから買ってください。
7-2.築年数が相当古い
築年数が相当古いのも、不動産投資に向いていません。大規模な改修工事で修繕費が数百万円必要になったり、築年数が古くて入居者が集まらなかったりする恐れがあるからです。
新築物件が安い地域だと、築年数が古い物件に入居する人は難しいと思った方が良いでしょう。
7-3.入居者の属性が似たり寄ったりの状態になっている
たとえば、入居者の大半が「〇〇大学の学生」、「〇〇会社の社員」というような物件も注意です。なぜなら、その大学や会社が移転した瞬間、住む人がいなくなるかもしれないからです。
とくにマンションやアパートを一棟購入した状態で、このような事象が起こると大損失を被るので、注意してください。
こちらの記事には、アパート経営で失敗するポイントが載っています。
関連記事>>必ずチェック!アパート経営で失敗しやすいポイントまとめ
8.不動産投資用の物件選びでは利回り以外の面も考慮する必要がある
不動産投資用の物件を選ぶ時は、利回り以外の面でも考慮すべき項目があります。最後に、ポイントを3つ見てみましょう。
8-1.物件の市場調査を行う
物件の市場調査を行いましょう。物件付近の街の雰囲気や、住人層、家賃相場などです。インターネット上だけではなく、物件付近の場所に出向き、自身の足で調査するのも大事です。この市場調査を基にして、購入する物件を決めましょう。
しかし、内容によっては自身で調査できない場合もあると思います。その時は不動産業者や役所などへ行って、情報収集するのも方法です。
8-2.購入後、キャッシュフローに問題がなさそうか確認する
キャッシュフローとは、お金の出入りです。つまり物件の購入後に、お金の出入りがスムーズか考えてから購入するのも大事なポイントなのです。
なお、キャッシュフローを判断する時には2つの利回りを覚えておくと便利でしょう。
8‐2‐1.自己資金投資利回り
自己資金投資利回りとは、自己資金に対して何%の利回りがあるか算出する時に活用できます。
計算式は下記の通りです(※ローンは含まれません)
「年間の家賃収入-(年間支出額+年間で返済する借入金額)」÷投資で使った自己資金
例を見てみましょう。
例.年間の家賃収入200万円、年間支出額50万円、年間で返済する借入金額50万円、自己資金額が2,000万円だった場合
「200万円-(50万円+50万円)」÷2,000万円=5%
よって、5%が利回りになります。
8‐2‐2.借入金返済後利回り
借入金返済後利回りとは、自己資金とローンを加味して計算する利回りです。これは、借入金を返済した時に何%の利回りになるか計算する時に便利です。
計算式は下記の通りです。
「年間の家賃収入-(年間支出額+年間で返済する借入金額)」÷物件販売価格
例を見てみましょう。
例.年間の家賃収入200万円、年間支出額50万円、年間で返済する借入金額50万円、物件販売価格が4,000万円(自己資金とローンが各2,000万円)だった場合
「200万円-(50万円+50万円)」÷4,000万円=2.5%
よって、2.5%が利回りです。
上記2つの公式を覚えておけば、キャッシュに視点を充てた利回りを計算できるため役立ちます。
8-3.収支計画を立てる
物件を購入する時は、収支計画を立てましょう。収支計画とは、不動産投資による収入と費用を詳しく算出することです。このように記載すると良いでしょう。
- 家賃収入→毎月〇万円
- 管理費→月々〇万円
- 固定資産税→年間〇万円
- 火災保険料→年間〇万円
- 修繕費→トータル〇万円
このように、項目ごとの金額を計算しましょう。もちろん、その金額の通りにならない場合もありますが、少なくとも投資時の目安の金額としては活用できるため、役立ちます。
物件の融資を受ける時は、収支計画書が必要になるので覚えておきましょう。
9.不動産投資の利回りのまとめ
利回りといっても、どの計算方法を利用するかで値は変わります。
実際に、想定利回りが10%と載っていても、実質利回りで計算すると半分以下になることもザラです。
不動産投資を成功させるためにも、自身で利回りを計算して、運営し続けられる物件か確認してから、購入しましょう。