本記事はPRを含みます。

不動産投資用語集

空室率の正しいデータと計算方法|賃貸住宅と貸しビルに分けて解説

更新日:

不動産投資家にとって、「空室率」の相場感は絶対に把握しておきたい事項です。

ところが、実際に空室率について調べてみると、「サイトによって数値が違うし見方がよくわからない!」「最近の空室率はどうなっているのか、新聞等では難しくてよく分からない!」と混乱された方もいるのではないでしょうか?

この記事では、空室率の基本的な計算方法から、賃貸住宅と貸しビル(オフィス)のそれぞれの空室率の現状まで解説します。

1.空室率とは何か?

1-1.空室率の定義

まず、空室率とは何か、という点から確認していきましょう。

空室率とは、マンションやアパートなどの賃貸住宅やオフィスなどの貸しビルの中で、空室がある割合のことです。

1-2.空室率の計算方法

「空室率について調べてみると、サイトによって数値が異なって混乱した」ということはありませんか?

実は、空室率はベースとする観点によって計算方法が異なるのです。

ここからは、空室率の計算方法を3つご紹介します。

※参考:『全国賃貸住宅新聞』2015年2月23日「第74回空室率の定義」

1-2-1.「時点」をベースとした計算(空室率の計算方法)

まず、「時点」をベースにした空室率の計算があります。

これは、まさに計算した「その時点」での空室率を計算するものです。「空室率」といった場合、最も多く使われるのがこの計算による空室率です。シンプルに空室率を算出したい場合は、この計算を使用します。

計算式は下のようになります。

空室率=[空室戸数÷賃貸することの可能な物件の戸数]×100

「空室戸数」とは、計算したその時点で賃貸借契約の存在しない部屋の戸数のことです。

これを、実際に賃貸することが可能な物件の戸数(その時点で空室のものと稼働しているものの合計)で割って100をかけると「時点」をベースにした空室率が出ます。

具体的に考えてみましょう。あるエリアの賃貸住宅数をリサーチした時に、全部で1000戸物件があったとします。そのうち、70戸が空室になっていたとします。

この場合、空室率は

70÷1000×100=7%

となります。

1-2-2.「稼働」をベースとした計算(空室率の計算方法)

次に、「稼働」をベースとした空室率の計算があります。

これは、実際に物件が稼働したかどうかで計算するものです。年間を通した実績まで算出したい場合は、この計算を使用します。

計算式は、下のようになります。

空室率={[年間の空室戸数×空室期間(日数)の平均]÷[全戸数×365日(1年)]}×100

「空室戸数」は、年間で一度でも賃貸借契約が解約になった物件の戸数です。

具体的に考えてみましょう。

ある貸しビルの全戸数が100部屋だとします。そのうち、年間で20戸の物件が空室になったとします。その空室期間の平均が90日だったとします。この場合の計算は以下のようになります。

[20戸×90日]÷[100戸×365日]×100=約4.9%(小数点第二位以下四捨五入)

上記の計算の場合、「年間の空室戸数」または「空室期間(日数)の平均」が小さければそれだけ空室率も下がるということになります。

1-2-3.「想定賃料」をベースとした計算(空室率の計算方法)

最後に、「想定賃料」をベースとした空室率の計算があります。

これは、先ほどのような日数ではなくて賃料を基準に計算するものです。「物件をちゃんと稼働させられているか」だけでなく、「賃料をきちんと回収できているか」まで算出したい場合は、この計算を使用します。
計算式は、下のようになります。

空室率=[(満室の場合入ってくる年間家賃収入-実際に入っている年間家賃収入)÷満室の場合入ってくる年間家賃収入]×100

具体的に考えてみましょう。あるアパートで、部屋数が10戸、それぞれ月10万円で貸し出していたとします。

このアパートでは、1年間満室だったら10万円×10戸×12か月=1200万円の家賃収入があるはずです。ところが、実際に入ったのは1000万円だったとします。この場合の空室率は以下のように計算されます。

空室率=[(1200万円-1000万円)÷1200万円]×100=約17%(小数点3位以下四捨五入)

空室率の計算方法については理解していただけたでしょうか?

空室率について調べた際は、その資料がどういった視点で空室率を算出しているのかを確認するとよいでしょう。

ここからは、具体的に空室率の現状がどうなっているのか、空室対策としてどのような方法が考えられるかについて、賃貸住宅と貸しビル(オフィス)に分けて説明していきたいと思います。

2.賃貸住宅の空室率

まず、賃貸住宅の空室率についてみていきましょう。

なお、ここで「空室率」という場合は、「時点」をベースとした計算:「空室戸数÷賃貸することの可能な物件の戸数×100」の計算で出したものを指すことにします。

2-1.空室率の現状~データ~

まず、さまざまなデータから賃貸住宅の空室率の現状をみていきます。

2-1-1.空室率の推移

空室率の推移は以下のグラフのようになっています。

gn-20140729-26

出典:「ガベージニュース 賃貸住宅の空き室率推移をグラフ化してみる(2014年)」

1978年から2013年にかけて、空室率は上昇し続けていることがわかります。それと同時に、賃貸住宅全体の物件数も上昇し続けています。

2-1-2.地域別の空室率

地域別に空室率を見てみると、以下のグラフのようになります。

gn-20140729-28

出典:「ガベージニュース 賃貸住宅の空き室率推移をグラフ化してみる(2014年)」

都道府県ごとの空室率を高い順・低い順それぞれランキングにしてみると、以下の表のようになります。

空室率の高い順空室率の低い順
第1位福井県(30.1%)沖縄県(11.7%)
第2位山梨県(28.2%)東京都(14.5%)
第3位長野県(27.7%)佐賀県(15.7%)
第4位茨城県(27.5%)宮崎県(15.8%)
第5位青森県(26.1%)愛知県・神奈川県(16.1%)

データ元:「HOME’S不動産投資」(2016.3.18)

空室率の最も高い県は福井県で30.1%、空き室率の最も低い県は沖縄県で11.7%となっています。

東京都・神奈川県・愛知県といった、人の多く集まるような都道府県はやはり空室率が低いようです。

2-2.空室率の現状~分析~

2-1でみたように、近年賃貸住宅の空室率は上がり続けています。この原因としては、どのようなものが考えられるのでしょうか?

前提として、賃貸住宅の空室率は、賃貸住宅を求める人・世帯の数(需要)と利用可能な賃貸住宅数(供給)の関係で決まります。このバランスが、下の2つの現象により崩れてきているのです。

2-2-1.人口減少(空室率の現状)

1つ目に、日本の人口が減少し続けています。

総務省のデータによれば、2015年9月時点での人口は1億2687万6千人で、前年同月に比べ減少しています。

10年前の2005年10月と比べてみると、約90万人も減っていることになります。人口の推移については、総務省のHPにも記載があります(総務省統計局)。

これから日本の人口は加速の一途をたどり、2030年以降は毎年100万人ずつの人口が減少するともいわれています。

人口が減れば、それだけ賃貸住宅の需要が減ることになりますので、空室率は増えることになります。

2-2-2.物件数の増加(空室率の現状)

2つ目に、上で見たように人口は減少しているにも関わらず、新しい賃貸用物件は次々と建築されています。

日本には、国による人口や世帯数に応じた住宅供給計画や建設計画といったものはありません。そのため、住宅用物件数の新築が行われてしまうのです。

人口が減って住宅物件の需要が減っているにも関わらず、住宅物件(供給)はどんどん増えるということになれば、供給が過剰になってしまいます。これにより、空室率が上昇しているのです。

ちなみに、住宅供給計画や建設計画といったものがないからといって新築がどんどん行われてしまう理由として、相続税対策として不動産を購入する人の需要があるから、ということが考えられます。

相続税のしくみ上、財産は現金で持っているより賃貸用の不動産として持っている方が節税になるのです。これを利用しようとする人からの需要があるために、新築物件が次々と増えてしまうというわけです。

2-3.空室対策にはどのようなものがあるか?

募集条件の見直し、家賃設定の見直し、設備のグレードを上げる、リフォームやリノベーションを実施するなど、空室対策には様々な方法があります。

詳しくは、「今すぐやるべき!入居率をUPさせる空室対策の方法10選」の記事で解説していますので、是非見てみてください。

3.貸しビル(オフィス)の空室率

次に、貸しビル(オフィス)の空室率についてみていきましょう。

なお、ここで「空室率」という場合は、「空室戸数÷賃貸することの可能な物件の戸数×100」の計算で出したものを指すことにします。

3-1.空室率の現状~データ~

まず、さまざまなデータから貸しビル(オフィス)の空室率の現状をみていきます。

3-1-1.近年の空室率の推移

2010年から2015年にかけての主要都市の空室率の推移をグラフにすると下のようになります(各年12月の空室率)。

officekusituritu

※東京5区は千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区です。
データ元:失敗しない住宅選び講座

各都市ともに、一定の周期で上下していることがわかります。

3-1-2.地域別の空室率

主要都市の2015年12月のオフィス空室率をグラフにすると、以下のようになります。

tiikibetu-officekusituritu

※東京5区は千代田区、中央区、港区、新宿区、渋谷区です。
データ元:失敗しない住宅選び講座

主要都市でみても、やはり東京の空室率が圧倒的に低いことがわかります。

3-2.空室率の現状~分析~

貸しビル(オフィス)の場合、空室率はどのように動くのでしょうか?

貸しビル(オフィス)の空室率は、オフィスを必要とするテナントの数(需要)と実際のオフィス用物件数(供給)の関係で決まります。このバランスの中で周期的に上下するのです。

加えて、オフィスの空室率は賃料とも相関関係があります。空室率が高い時期は、オフィスの需要は緩やかな状態ですので、借り手であるテナント企業が優位な状況といえ、賃料は下がりやすいです。

一方、空室率が低い時期は、需要が差し迫った状態ですので、貸し手であるオーナーが優位な状況といえ、賃料は上がりやすいです。

空室率と賃料の関係が逆転する空室率の水準を「自然空室率」とよび、その数値はこれまで5%前後といわれてきました。

ただ、近年この数値は上昇してきており、現在ではこの数値は7%ともいわれるようになりました。

3-3.空室対策にはどのようなものがあるか?

貸しビルのオーナーとして、できる空室対策はどのようなものがあるのでしょうか?

3-3-0.オフィスが空室になる原因を検討する(空室率下げる対策)

まず、オフィスが空室になってしまう原因を検証しましょう。

原因として考えられるものをあげると、下のようになります。

①なかなかテナントが決まらない原因
・そもそも物件の募集情報が行き渡っていない
・競合物件と比較して魅力的な点がない
・テナント候補や仲介業者に十分な資料が行き渡ってない
②すぐに退去されてしまう原因
・設備・快適性・管理への不満
・面積が足りなくなった、立地戦略の問題

3-3-1.告知方法を見直す(空室率下げる対策)

そもそも物件の募集情報が行き渡っていなければ、テナントは来ません。なかなか入居者が来ないという場合は、まず告知方法を見直してみるのが良いでしょう。

具体的には、広告してもらう仲介業者が適切か検討する、業者への電話・訪問回数を増やす、広告内容をよりわかりやすく修正する、などです。

3-3-2.競合エリア内の他の物件をリサーチする(空室率下げる対策)

テナントにとって、同じ立地の競合物件と比較して魅力的な点がなければその物件に決めることはできません。

競合エリア内で人気のある物件をリサーチし、それと自分の物件を比較しどこが違うか認識することが必要です。

3-3-3.物件資料を整える(空室率下げる対策)

テナント候補がせっかく物件に興味を持っても、渡された資料が少なければ問合わせてみようという気にはなりません。

また、仲介業者に十分な資料が行き渡ってない場合、優先的にその物件を紹介しようとはしてくれません。

物件に興味を持ってくれたテナント候補や営業をしてくれる仲介業者に十分な資料が行き渡っているか、確認する必要があるでしょう。

3-3-4.物件の設備・快適性・管理を見直す(空室率下げる対策)

テナントが決まってもすぐに退去されてしまうという場合、物件の設備・快適性・管理面で何らかの不満を持たれた可能性があります。

これらの面でテナント流出の原因になっているものがないか、日頃から確認・対策をすることが必要です。

3-3-5.ニーズを確認する(空室率下げる対策)

テナント流出の原因として、物件が面積や立地などの面でテナントのニーズに合わなくなったということが考えられます。

自分の物件がどういった企業を対象とするのかを明確にし、それに合わせて物件の管理・設備の拡充・広告をすることで、入居者も増え、テナントの流出も防ぐことができるでしょう。

3-3-6.貸し会議室として利用する(空室率下げる対策)

その他の空室対策として、オフィス用の部屋を貸し会議室として利用するということがあげられます。

貸し会議室とは、オフィス一室を会議室として一定期間貸し出すサービスのことです。部屋を恒常的に賃貸・保有するのではなく、必要に応じてレンタルするという方式です。

最近になり、空室を貸し会議室に利用するというのが、空室対策として注目を集めています。始めるための費用がかからず、空室を有効活用できるからです。

一方のテナント側としても、不況やデフレで企業業績が低下していることから、オフィスを恒常的に保有するよりもコストの低い貸し会議室を利用しようという需要が高まっています。

貸し会議室を始める上で、備品として最低限必要なのは会議用机、椅子、ホワイトボードです。

これに加え、オプションとしてプロジェクター、スクリーン、マイク、CD・DVDプレイヤー、テレビ、マイクスタンド、演台などを用意すると良いでしょう。

3-3-7.シェアオフィスへのリノベーション(空室率下げる対策)

中小ビルの場合、「シェアオフィス」にリノベーションするという方法も考えられます。

シェアオフィスとは、ひと部屋が7~24坪程度の小規模のオフィスに、会議室やコピー機等のOA機器を共有し複数の利用者が同じスペースを共有するものです。

シェアオフィスへのリノベーションは以下の手順で行います。

①専有部の間仕切りを行い、小割オフィスと内廊下を作る
②共用の会議室やラウンジを設ける

共用部にはコピー機やドリンクサーバーがあると良いでしょう。さらに、屋上を開放して喫煙コーナーを作るとさらに良いです。

4.まとめ

空室率について解説しましたがいかがでしたか?空室率は基本的な計算としくみをおさえておけば難しくないのです。

また、空室対策も、しっかり原因から探っていけば実践できるはずです。この記事が、不動産投資に関わるすべての方の参考になれば幸いです。

  • この記事を書いた人
武田正和

m.takeda

1984年生まれ。イエベスト監修者。宅地建物取引士・管理業務主任者・マンション管理士。不動産に関する多数の資格を保持し、個人としても複数の不動産投資を手掛ける。複雑な不動産の知識を、初心者でも理解できるように届けることをミッションに、正確で信頼のできる情報を提供している。

-不動産投資用語集

Copyright© イエベスト , 2024 All Rights Reserved.