賃貸経営は、リスクが高く、儲かるどころか赤字に陥ることもあります。
賃貸経営は、その字面にある通り「経営」です。
テレビ、雑誌、インターネットの広告などで盛んにアピールされる「片手間で副収入!」「不労所得で悠々自適な生活」というような甘い世界の出来事ではないのです。
とは言え、今後、給料は上がらない、老後の公的年金もあてにならないなど、自分自身で資産形成を考えることなしには生き残れない世の中になっていきます。
つい先日、「95歳まで生きるには夫婦で約2千万円の金融資産の取り崩しが必要になる」というニュースが、話題になりましたね。
しかし、賃貸経営は、甘い世界ではありませんが、きちんと対策さえすれば成功することも不可能ではありません。資産形成の方法として、有効な手段といえます。
そこで本日は、賃貸経営の現状、メリット、デメリット、発生する問題の対策方法を紹介します。ぜひ、賃貸経営をおこなうかどうかを判断する材料にしてください!
この記事を読むと分かること
- 賃貸経営の現状
- 賃貸経営のメリット
- 賃貸経営のデメリット
- 発生する問題の対策方法
1.賃貸経営の現状分析
1-1.賃貸経営はリスクが高い
賃貸経営は、リスクが高いです。
「3.賃貸経営のデメリット」で詳しく説明しますが、
- 金利上昇
- 災害
- 空室
- 家賃滞納
- 老朽化
- 入居者トラブル
- 家賃下落
- 売却できない
などなど、様々なリスクがあります。事前の準備次第で対策することは可能ですが、経営マインドをもって高い意識で取り組む必要性があります。
1-2.相続税対策で賃貸住宅着工数は増加傾向
賃貸経営はリスクが高く、運用の難易度も高いですが、新規賃貸住宅の着工数は増加傾向にあります。
理由としては、平成27年に改正された相続税法の影響が大きいです。この法改正により、相続税課税対象者は約2倍に増えています。
1 被相続人数等
平成27年中に亡くなられた方(被相続人数)は約129万人(平成26年約127万人)、このうち相続税の課税対象となった被相続人数は約10万3千人(平成26年約5万6千人)で、課税割合は8.0%(平成26年4.4%)となっており、平成26年より3.6ポイント増加しました。出典:「平成27年分の相続税の申告状況について」国税庁
課税対象者が増えたことにより、節税対策として不動産投資を始めた人が増えたと考えられます。
平成28年度の新設住宅着工戸数は、前年度と比較すると、全体で5.8%の増加となった。出典:「建築着工統計調査報告(平成28年度計)」国土交通省総合政策局建設経済統計調査室
実際、貸家の新規着工戸数は、平成26年362,191戸(前年比 1.7%増)、平成27年383,678戸(前年度比 7.1%増)、平成28年427,275戸(前年度比 11.4%増)と上昇しています。
年度 | 貸家 | 持ち家 | 分譲住宅 |
平成26年 | 362,191戸(前年比 1.7%増) | 285,270戸(前年比 19.6%減) | 237,428戸(前年比 10.0%減) |
平成27年 | 383,678戸(前年度比 7.1%増) | 284,441戸(前年度比 2.2%増) | 246,586戸(前年度比 4.5%増) |
平成28年 | 427,275戸 (前年度比 11.4%増) | 291,783戸(前年度比 2.6%増) | 249,286戸(前年度比 1.1%増) |
1-3.古い物件は家賃を安くする等工夫する必要がある
築年数が古い物件は、家賃を安くする等工夫しなければ、空室が発生し赤字になってしまう状況です。
同じエリアで、古い物件と新しい物件が同じ家賃で入居者を募集している場合、どうしても新しい物件に入居者は集まります。
家賃を安くする他には、リフォームして物件自体の価値を上げる方法もありますが、どちらにしても何らかの対策がなされない場合は、築年数の古い物件は不利な状況です。
2.賃貸経営のメリット
賃貸経営をおこなうメリットを紹介します。
2-1.長期的な家賃収入
賃貸経営は、入居者を集めることに成功すれば、長期的な家賃収入になります。
つい先日、「95歳まで生きるには夫婦で約2千万円の金融資産の取り崩しが必要になる」というニュースが話題になりましたが、賃貸経営に成功すれば、日々の生活の質の工場に繋がるだけでなく、老後の生活資金対策にもなります。
2-2.生命保険代わり
住宅ローンを契約する際「団体信用生命保険」に加入することにより、万が一、契約者が亡くなってしまっても、ローン残額を代わりに支払ってくれます。
家賃収入に関しては、残された家族が受け取ることができるので安心です。
2-3.インフレ対策
不動産は、他の投資に比べてインフレに強い特徴があります。
インフレとは、物価が上昇しお金の価値が下がることです。インフレになった場合、現金や預貯金などの金融資産の価値が下がりますが、不動産は物価の上昇とともに価値が上がっていきます。
2-4.ローンで開始可能
不動産投資は、他の投資と違い、ローンを組んで開始することが可能です。
一般的には、自己資金として頭金を物件価格の1~3割用意します。しかし、中には、自己資金なし、つまり頭金0でもローンを組むことが可能です。
※ローンの頭金について詳しく知りたい方は「頭金0円?それとも1割?アパート経営に必要な自己資金の話まとめ」もご覧ください。
2-5.節税できる
不動産投資は、節税にもなります。
賃貸経営がうまくいかず赤字になってしまった場合、赤自分を給与所得から差し引くことができます。所得税や住民税などの課税対象額が下がるため、結果的に節税に繋がるのです。
※不動産投資でおこなう節税についてより詳しく知りたい方は「不動産投資の節税の仕組みと効果|サラリーマンに最適って本当?」もご覧ください。
3.賃貸経営のデメリット
賃貸経営をおこなうデメリットを紹介します。
3-1.金利上昇
物件を変動金利ローンで購入した場合、金利が上昇するとローン返済額が上がります。
35年返済で3,000万円を借りた場合、金利が1%上昇するだけで、毎月約2万円返済額が上昇します。年間にすると24万円。30年にすると720万円も差が生まれてしまいます。
そのため、金利上昇を考えたローン返済計画が、必要です。
※金利は利用する銀行により変わってきます。銀行から借りるローンの金利についてより詳しく知りたい方は「不動産投資用ローンの金利相場を金融機関ごとに紹介!」もご覧ください。
3-2.災害
日本は、外国に比べて地震などの自然災害が多いと言われています。
世界全体に占める日本の災害発生割合は,マグニチュード6以上の地震回数20.8%,活火山数7.0%,死者数0.4%,災害被害額18.3%など,世界の0.25%の国土面積に比して,非常に高くなっている。
出典:「1.災害を受けやすい日本の国土」内閣府
地震、火災により建物が全壊・全焼してしまうリスクがあります。
3-3.空室
賃貸経営において、最大のリスクとも言えるのが空室です。
空室が発生すると、家賃収入が途絶えます。しかし、その間も、維持費は発生し続けることになります。
3-4.家賃滞納
物件が満室になっても、入居者が家賃を滞納するリスクがあります。
家賃の支払いを催促する必要があり、本来であれば必要のない余分な労力がかかってしまいます。
3-5.老朽化
いくら新しい物件でも、年数を重ねると老朽化します。
老朽化した物件は入居者が集まり辛い傾向にあり、空室が発生するリスクにも繋がります。
3-6.入居者トラブル
騒音などで、入居者同士がトラブルを起こすリスクがあります。
入居者本人は普通に生活しているつもりでも、隣人と生活リズムが朝と夜で違うだけで騒音が気になってしまう等、あらかじめ防ぎづらい性質のトラブルです。
3-7.家賃下落
空室が続く、老朽化が進行する、など家賃収入がなくなる状況が続けば、家賃を下げてでも新しい入居者を集めなければなりません。
家賃が下がれば、その分収入が下がるので、収支のバランスが悪くなります。
3-8.売却できない
いざ、物件を売却しようとしても、簡単に売れるとは限りません。
物件を売りに出してから購入が完了するまでには、通常3~6ヶ月がかかると言われています。
空室が続いている、老朽が激しいなど条件が悪い場合は、更に長い期間がかかる可能性もあります。
4.賃貸経営での大家の仕事
そもそも、賃貸経営で大家がしなければいけないことは何があるのか?を紹介します。
なお、これから紹介する項目は、すべて大家自身がおこなう必要はなく、不動産会社に代行を依頼することも可能です。
入居者の管理 | 建物の管理 | 資金の管理 | |
通常時 | 家賃管理 | 掃除などのメンテナンス | リフォーム費用等の積立 賃貸経営の収支管理 税金関係の書類手配 |
緊急時 | 入居者のクレーム対応 | 設備の修繕 リフォーム | 確定申告 固定資産税支払い |
更新時 | 入居者の更新有無確認 更新手続き | 更新・退去に伴う収支管理 | |
退去時 | 退去立ち会い 修繕箇所の確認 家賃・敷金等の精算 次の入居者の募集 | リフォーム 部屋のクリーニング | |
委託先 | 不動産会社 | 不動産会社 | 税理士など |
4-1.入居者の管理
大家はまず、入居者の管理をおこないます。家賃の決定、入居者の募集、その後、賃貸契約を結び、物件での生活が正式にスタートしてからは、家賃の管理、クレーム対応等をおこないます。
契約期間終了時には、更新、退去の手続きもおこないますが、6ヶ月〜3ヶ月前に入居者に更新か退去かを確認する必要があります。
4-2.建物の管理
大家は、建物の管理もしなければいけません。建物の管理状態が悪いと入居者が集まりにくくなり、空室に繋がるからです。人が生活すれば当然、部屋は汚れるため定期的に修繕が必要です。
例えば、タバコで染み付いた壁のヤニなどは、次の入居者のために新しく貼り替える必要があります。この場合は、通常損耗(普通に生活していて損傷する範囲)ではないため大家負担はありませんが、それ以外の場合は、大家が負担して修繕をする必要があります。
4-3.資金の管理
大家は、家賃収入を適切に管理し、維持費、税金などの支払いに備える必要があります。特に、築年数が古い物件の場合、大規模なリフォームが必要な場合もあります。
また、管理する資金は収支を正確に把握した上で、毎年、確定申告をしなければいけません。
5.賃貸経営で発生する問題の対策方法
さきほど、「3.賃貸経営のデメリット」を紹介しましたが、実は、事前の準備により対策することも可能です。
ここでは、賃貸経営でおきる問題の対策方法を紹介します。
5-1.キャッシュフローを作成する
賃貸経営をおこなうと決めたら、キャッシュフローを作成しましょう。
銀行でローンを組む場合に審査で必要になりますし、実際に、収支を数字として目に見える形にしておくことで、空室や部屋の設備故障の修理などの際に必要な出費にも対応することができます。
5-2.立地を事前に調査する
賃貸経営をおこなうと決めたら、どの立地で物件を持つのかを事前に調査しましょう。
立地によって、住む人の属性がちがうため、家賃収入の額が変わってくるからです。
例えば、東京の場合、港区、千代田区、中央区などは高級エリアのため高収入の人が多く、家賃収入も高くなります。逆に、足立区、葛飾区、江戸川区などは、庶民的なエリアのため家賃収入も低くなる傾向にあります。
※エリアによる特性の違いについては東京のエリア記事が参考になります。「東京で不動産投資をする人へ5つの注意点|物件購入時のコツも徹底分析」も御覧ください。
5-3.空室リスクを減らす
賃貸経営において最大のリスクとも言える空室リスクも、事前の準備で対策が可能です。
1番大切なことは、賃貸経営をおこなう予定の物件の周辺エリアの物件を調べることです。周辺エリアの物件はライバルであり、敵の情報を知ることが成功に繋がるからです。
家賃相場、間取り、設備の充実度などを知ることで、適切に家賃設定をすることができ、所有物件でアピールすべきポイントも把握することができます。
5-4.物件の状態を正確に把握する
賃貸経営をおこなう際は、所有予定の物件の状態を正確に分析することが大切です。
外観は見た目で分かりますが、部屋の中は実際に自分の目で確認しなければ分からないので注意が必要です。万が一、満室の場合でも、不動産会社に依頼すれば図面を見せてくれます。
また、住人同士でトラブルがないか、特に騒音問題が起きていないかを確認する必要があります。
利回りも「表面利回り」だけで判断せず、外観・内面などを確認した上で「実質利回り」を見るようにしましょう。
※「表面利回り」と「実質利回り」についてより詳しく知りたい方は「【図で解説】アパート経営の利回り|正しい計算方法と相場・目安」もご覧ください。
まとめ
以上、賃貸経営の現状、メリット、デメリット、発生する問題の対策方法を紹介しました。
賃貸経営はリスクが高く、簡単ではありません。ただ、経営者マインドも持って運営すれば、成功することも可能です。
今回は、賃貸経営のメリット・デメリットを中心に紹介しました。ぜひ、賃貸経営をおこなうかどうかを判断する材料にしてください!